小説 あなたと夜と音楽と 14
セロニアス・モンクに出会ったその日の夜、私は奇妙な夢を観る。
私はバス停にいる。
誰かを待っている。幾つかのバスが私の前に止まり通り過ぎて行く。
私はしびれを切らし、そのバス停から離れようとする。
でも動けない。
足元を観ると幾つもの手が私の足を掴んでいる。
やがて幾つもの手が私の腰を掴み始める。
助けを呼ぼうとする。声が出ない。どれだけ叫んでも声が出ない。
その時、目の前でバスが留まる。
妻が降りて来る。
「 そうね 」と妻は笑いながら言う。
「 少なくとも、あなたよりは優秀な人達じゃないかしら? 」