素敵な図書館

毎週土曜、夜11時に僕、佐藤が自作小説をアップしていくブログです。コーヒー、あるいはお酒を飲みながら訪問していただけたら嬉しいです

2016-01-01から1ヶ月間の記事一覧

小説『 モダン・アート 』4

僕は湯呑みにお茶の粉を一杯分入れ、備え付けのお湯を注ぎ両手でゆっくりお茶を飲んだ。喉元を温かいお茶が通り過ぎる。「 本当はこんな時間を望んでいたんだ。美味しい寿司を食べて少しでも落ち着ける時間が欲しかったんだ 」と少し涙が出そうになった。 「…

小説『 モダン・アート 』3

「 お客さんは俺の外見を見てこう想っている。長髪で無精髭を生やしている店員が寿司なんて握れるわけがない 」と那須は言った。 当たり前の話だった。100人いたら100人同じ考えに辿り着くに決まっている。そしてそんな店員の寿司なんて食べたくない。…

小説『 モダン・アート 』2

案の定、店内には客は一人もいなかった。僕と武丸君はカウンターに座った。回転寿しのレールには一皿も乗っておらずコンベアも止まっていた。消毒液がきつい程匂い、天井スピーカーから静かにジャズが流れていた。スシローでジャズ?客で賑やかな店内しか知…

小説『 モダン・アート 』1

正直な話、僕が失業中でなければその友人の誘いは断っていた。高校の時に同じクラスメートで、卒業した後は彼と顔をあわせる事はなかった。僕は就職して、彼は大学生になった。彼から電話がかかってきた時、懐かしさより驚きの方が強く本当に彼の声だという…

小説『 愛を知っているならパスタで踊れ 』15

手探りで壁沿いのスイッチを探した。普段、壁を触っていないし気にもとめてないからわからないけど、思ったより変な粘り気を感じた。カビ臭い匂いも手の感触も暗闇のせいだろうと思った。ようやくスイッチを見つけ電気をつけた。部屋の中はソファを残して他…