素敵な図書館

毎週土曜、夜11時に僕、佐藤が自作小説をアップしていくブログです。コーヒー、あるいはお酒を飲みながら訪問していただけたら嬉しいです

2015-08-01から1ヶ月間の記事一覧

小説 aim 72 ー常盤

「 えぇ、世界中が寄ってたかって自分を嵌めようと企んでるんじゃないかって想うくらい、おかしな事が続いてるんですよ。まさか、これがクリスマスプレゼントじゃないよな 」と常盤は独り言の様な愚痴をこぼす。「 お客さん、この曲でも聴いて落ち着いて下さ…

小説 aim 71 ー常盤

「 結局、その人は入院していなかったんです。いや、そんな事言われても困ります。騙してる様に想えなかったんですよ?その時、たまたま八田から電話があてケーキ屋に向かったんです。誰だって俺と同じ行動をしますよ。え?警察に電話するのが当たり前? 」 …

小説 aim 70 ー常盤

常盤は病院を出てタクシーに乗り、ケーキ屋に向かう。 青い封筒を捨ててしまおうか迷ったが、結局胸ポケットにしまう。 俺は何をしているんだろう? 仕事中だぞ?と想う。 コンビニでパンクした後、大人しくJAFを待っていれば良かったんだ。 上司に報告する…

小説 aim 69 ー常盤

「 マズイ事になった 」と八田は言った。 電話の向こう側から、嫌な予感が八田の押し殺した声から伝わる。 「 実は、こっちもだいぶマズイんだ 」と常盤は言った。 いつもなら笑ってくれる八田だが、笑い声は聞こえない。 「 今朝、話したケーキ屋で俺が買い…

小説 aim 68 ー常盤

「 長尾隆史と言う方は、当院では入院されていません。失礼ですがお間違いではないでしょうか? 」と看護師は言った。常盤は看護師に説明する。長尾隆史さんに、この青い封筒を渡して欲しいと頼まれたんです。「 申し訳ないですが、当院には居ないのです 」…

小説 aim 67 ー那須

妻は夢の中で言った。 《 誰も、あなたのことを許さない 》 なぁ、ジェリーマリガン。 私は、あれから小説を書き続けてきた。 それでも、私は許されないのだろうか? 信晴が私に何か話しかけている。 何も聴き取れず、那須は目を閉じた。

小説 aim 66 ー那須

佐藤が帰った後、那須と信晴は小説の続きにとりかかる。 「 佐藤さんとは長い付き合いなの? 」 「 小学校からの友人だ 」と那須は言う。 「 あの頃は、何もかもがシンプルだった。好きなものを好きと言えた。嫌いな事はしなくて済んだ 。 今は、何もかもが…

小説 aim 65 ー那須

「 真下の助手が教えてくれたんだ。2人が君の所に向かった事を。助手は《 心眼師 》だよ。彼に嘘は通用しない 」と佐藤は言う。 「 心眼師?まだ生き残りがいたんだ。私は彼には会わなかったよ 」と那須は言う。 佐藤は頷く。 彼が嘘を付いてる様には思えな…

小説 aim 64 ー那須

「 初めから、それを聞きたくて、此処まで来たんだろ? 」と那須は言う。 「 君の娘と真下と言う男がここに来たよね 」と佐藤は言う。 「 あぁ、来たよ 」と那須は言う。 「 その2人が2ヶ月も帰ってないんだ。不思議だと思わないかい? 」と佐藤は言う。 「 …

小説 aim 63 ー那須

「 なぁ、あの主人公みたいに私が人の心を殺せるとしたら、お前はどう想う? 」と那須は言う。 「 仮に君が人の心を殺せたとする。その上、君は連続殺人鬼で、女風呂に隠しカメラをセットする変質者だったとする。 そんな事は、僕は知らないし、1ミリも関係…

小説 aim 62 ー那須

「 ただ私は、文庫本を読むのが好きだ。1枚1枚めくるのが好きなんだよ。それは、レコードに針を落とす動作に似ている。何かの儀式の様な神聖な行為なんだよ、本を読むと言う事は。だから小説家は読者の想像を超えた観た事のない旅に、連れて行かなければな…

小説 aim 61 ー那須

佐藤は、小学校からの友達だった。 「 今は、何をしている? 」と那須は言う。 「 最近まで、図書館の館長をやっていたけど、今は温泉巡りをしている。時々、小説を書いている 」佐藤は言う。 「 相変わらず肩の力を抜いた生き方だな。お前が羨ましい 」 「 …

小説 aim 60 ー那須

「 お父さんにお客さんだよ 」と信晴は言う。 「 珍しいな、誰だろ? 」と那須は言う。 「 マイルスデイビス 」と信晴は言う。 那須は思わず苦い笑いをしてしまう。 「 やあ、久しぶりだね。那須君 」と佐藤は言う。 「 もう会えないと思っていたよ 」と那須…

小説 aim 59 ー白木

「 彼は、福岡に住んでいます。新幹線のチケットを用意しています。僕は午後から講義があるから、夜の10時には、そちらに行けると思います 」 「 私は1人で行くの? 」 「 ボクの助手と行って下さい。駅に行けば分かります 」 「 もし、彼が人の心を殺せる…

小説 aim 58 ー白木

白木は、そこで目が覚める。 起きた瞬間、此処はどこなんだろう?と思う。 部屋の窓に近づきカーテンを開ける。 空にはぼんやり月が浮かび、雪が静かに降っている。 白木は手を撫でる。彼の手の温もりを感じる。 私は、那須信也に会わなければならない。 翌…

小説 aim 57 ー白木

白木は、私も母親の心を殺したかも知れないと思う。 違う、それは私がしたことだ。そいつの話を信じてはいけない、と彼は言う。 「 お前達を許さない 」 声は鳴り止まない。 真っ赤なドアを開く。 ヴィレッジヴァンガードに着いたよ、と彼は言う。

小説 aim 56 ー白木

さっきより、走るスピードが速くなる。 一体、誰に追われているのだろうか? 私達を追っているのは、君の良く知っている人間だ。いいかい?何があっても、後ろを振り返ってはいけない。振り返ってしまったら、君はここから出られなくなる、と彼は言う。 後ろ…

小説 aim 55 ー白木

その日の夜、白木は夢をみる。 白木は誰かと手を繋いでいる。 何かに追われているのか、2人は走っている。 あなたは誰なの?と白木は言う。 私は那須信也だよ、と男は言う。 君の母親の心を殺したのは私だ、と彼は後ろを振り向かず言う。 あなたは私の母親を…

小説 aim 54 ー白木

「 今、会わなければ、あなたは誰を憎んでいるのか解らなくなります。あなたの母親の心を殺した理由も、彼が何者かも知る必要があるんじゃないんですか?それとも、また心を閉ざして、話せないフリをして生きて行くんですか? 」と真下は言う。 少し、考えせ…

小説 aim 53 ー白木

「 そして、あなたは那須信也を憎んでいる 」 白木は頷く。 「 でも、忘却カードでも那須信也の記憶が消えないと言う事は、2つの理由が考えられます。まず1つ、那須信也は、そもそも、あなたの父親ではない 」と真下は言う。 「 2つ目、那須信也は既に死…

小説 aim 52 ー白木

「 この図書館と同じで、記憶を抜き取ると同じことですか? 」と真下は言う。 「 ここは、望んだ人が、あなたにお願いして、記憶を抜き取るんでしょ?那須信也は、無理やりするのよ 」と白木は言う。 「 彼が書いた小説に《 あなたと夜と音楽と 》に出てくる…

小説 aim 51 ー白木

日付がもう少しで変わりそうだが、館内はお客さんで溢れている。 「 あなたのお母さんは、心を殺されたと言いましたよね?心が殺されると言うのは、具体的にどう言う事なんでしょうか? 」と真下は言う。 白木は、母が経験してきた事を真下に説明する。 那須…

小説 aim 50 ー白木

那須信也の小説コーナーには、小説以外にも、ジャズのCDが並んでいる。 セロニアス•モンク『 5BY MONK BY5 』 ジェリー•マリガン『 WHAT IS THERE TO SAY 』並べたのは現在の館長、真下。 「 これが、あなたが私に優しくしてくれる理由? 」と白木は言う。 …

小説 aim 49 ー小久保

女性が建物に入ったのを確認して、車から降りる。 地図にもない場所に、こんな時間に人が集まる建物に興味が湧く。 ここは、一体なんなんだろう? 小久保は、建物の扉を開く。

小説 aim 48 ー小久保

《 お願いします 》と女性はノートに書いて小久保に見せた。 発車してから10分も経たずに女性は眠ってしまった。 言葉が話せない生活は、どんな感じなんだろうか?と小久保には想像がつかない。 そう考えると、俺は恵まれているかも知れない。 目的地に着…

小説 aim 47 ー小久保

佐川急便の客を東海病院に送った後、近くの駅の喫煙所で煙草を吸う。 外を見ると、いつの間にか雪が降っている 積もらなければいいけどな、と小久保は思う。 煙草を吸った後、駅で待っていると1人の女性がタクシーに乗り込んできた。 行き先を小久保は尋ねる…

小説 aim 46 ー小久保

「 そんな事、考えた事もないかな。ただ働いて、寝て、起きて。また働いて、時々休んでまた働く。その繰り返しだから、難しい質問ですね。お兄さん、佐川急便の従業員でもあり、哲学者か何かですか 」と小久保は笑いながら言った。 「 俺は、せっせと働いて…

小説 aim 45 ー小久保

たまたま車のタイヤがパンクして、たまたま変な客に荷物を運んで欲しいと頼まれる。 これで、配送ルートがたまたま違うとなれば、安っぽい2時間ドラマの探偵ものみたいだな、と小久保は想ったが口にはしない。 選挙カーが、小久保のタクシーとすれ違う。 《…

小説 aim 44 ー小久保

「 お兄さん、よくそれを引き受けましたね? 」と小久保は言った。 「 なんか凄い勢いで、真実がどうだとか、アルパチーノがどうだとか言われてついつい 」と佐川急便の客は言った。 「 良い人だなぁ。でもなんで自分の車で行かないの? 」 「 今まで、色ん…

小説 aim 43 ー小久保

忘年会シーズンで、酒で酔った客を乗せる機会が増えた。 呂律が回らず、行き先が聴き取りづらい。 指定された場所に着いたら、ここじゃない!と怒鳴り散らす客や、途中で吐く奴、会社の同僚の男女が酒の勢いで、ホテルに行ったりと飽きない。 そんな状況でも…