小説 あなたと夜と音楽と 19
私は自分自身を赦す為に、小説を書き続けた。
ジェリー・マリガンが言った様に毎日。
私と世界が繋ぎ止めていられる、妻を忘れられずにいられる唯一の方法だった。
毎晩、あのバス停の夢をみた。
不思議と恐怖は薄らいでいった。
誰にも許されないとしても、私は書き続けた。
最後の章を書き終えた私は、小説のタイトルを『 あなたと夜と音楽と 』に決めた。
その日以来、夢も見なくなったし、白昼夢の様な出来事も起きなかった。ひょっとしたら、全ては幻想で19時には、あのドアから、ただいまと妻が帰ってくる気がしていた。