素敵な図書館

毎週土曜、夜11時に僕、佐藤が自作小説をアップしていくブログです。コーヒー、あるいはお酒を飲みながら訪問していただけたら嬉しいです

2015-09-01から1ヶ月間の記事一覧

小説 aim 102 ー信晴

「 あなたは母を家から追い出した。精神を病んでしまったあなたを必死に救おうとしたのに。その時、母のお腹の中には私がいました 」と白木は言った。 「 その事は、本当にすまないと思っている。ただ、君がお腹にいた事は、私は知らされていないんだ 」と那…

小説 aim 101 ー信晴

「 その話が本当なら、あなたと僕は兄弟ですね 」と信晴は言う。 「 私はごめんだわ。姉を縄で縛りつける弟なんて 」と白木は言う。 「 何も殺そうなんて思っていませんよ。今、急いで調べてもらっています。それが解ったらあなた達は自由です 」と信晴は言…

小説 aim 100 ー真下

「 そうね。そうかも知れない 」と白木は笑う。 もう必要以上に怯えるのは止めにしようと、白木は想う。 どんな真実が、この先に待っていようと焦る事はない。 私は母親の味方であり、母親は私の味方なのだ。 それは、どんな力を持っていたとしても、引っく…

小説 aim 99 ー真下

白木は静かに頷き「 あなたと話していると、私が今まで否定してきた過去が、肯定されていく感じだわ 」と言う。 「 ボクは単純に必要以上に怯えたくない。起こりもしない事に悩んだりしたくないんです。そう言うのを能天気と言うかも知れないけど 」 「 それ…

小説 aim 98 ー真下

「 ボクの父親は、自分が子どもだった頃、ボクと同じ様に、サンタさんに心待ちにして、プレゼントに喜んでいたと思います。その風景をボクと重ねていたと想う 」と真下は言う。 「 あなたの母親も、昔は子どもだった。あなたの母親が子どもだった頃、楽しか…

小説 aim 97 ー真下

「 朝、目覚めるとベッドの上にプレゼントが置いてあります。朝の日差しで宙に舞っている埃がキラキラ光って、宝石の様に観えます。サンタさんは、必ず、ボクが望んだオモチャを持ってきてくれるんです。ボクは、父親に、サンタさんがやってきた!と言います…

小説 aim 96 ー真下

白木は顔をあげ真下の顔をみる。 真下は何が言いたいんだろう? コーヒーは少し前に注がれたばかりのに、もう冷たくなっている。 「 あのレコードを聴いていると、クリスマスの夜の思い出が蘇ってくるんです。ボクが寝る前に『 サンタさんに手紙は書いた?』…

小説 aim 95 ー真下

「 母親?あなたの母親は、あなたの味方じゃないんですか? 」 「 私達を追っていた人間は《 お前達を許さない 》と言ったわ。その言葉を聞いて、私の存在自体が、彼が母親の心を殺す原因になったんじゃないか、と感じたの 」と白木は言う。 「 私は、誰にも…

小説 aim 94 ー真下

「 誰かが私達を追いかけてくるの。《 私達を追っているのは、君の良く知っている人間だ。いいかい?何があっても、後ろを振り返ってはいけない。振り返ってしまったら、君はここから出られなくる 》と彼は言い、ヴィレッジヴァンガードに向かう 」と白木は…

小説 aim 93 ー真下

「 何も心配しなくても、大丈夫です。明日、予定通り、那須信也に会いに行きましょう 」と真下は言う。 白木は、コーヒーカップの中を覗きこんだまま黙る。 その中に、あるべき答えを探してる様に観える。 「 昨日の夜、図書館で夢を見たの。私は、那須信也…

小説 aim 92 ー真下

真下と白木は『 ホテルニューオータニ博多 』のロビーで話しをしている。 ケニーバレルの『 ミッドナイトブルー 』が流れている。 もう少し、クリスマスに合うジャズだったら良いのにと真下は想う。 「 佐々木くんは、一緒じゃないんですか? 」と真下は言う…

小説 aim 91 ー佐々木

「 う〜ん。言われてみればそうかもな 」と小久保は首を捻る。 「 灘丘さんは元気だろうか 」と小久保は独り言の様に呟く。 「 彼の記憶はこの図書館で引き取っています。灘丘さんは、その後、全くの別人になりました。顔も変わっていたんです 」 記憶を引き…

小説 aim 90 ー佐々木

「 灘丘さんが直接、ここに来てベルトを寄付してくれたんです 」 「 灘丘さんは、俺の憧れだったんだ 」と小久保は言う。 佐々木は、小久保が灘丘と一緒の施設で育った事を知っている。 「 俺は、タクシーに乗る前は、プロレスをやっていた 」 佐々木は、勿…

小説 aim 89 ー佐々木

「 女に決まってるだろ 」 「 次に好きなものは? 」 「 プロレスかな 」 「 じゃあ、プロレスの本のコーナーに行きましょう。地下にあります 」 2人は地下に行きプロレスの本のコーナーに行く。 まず目に飛び込んできたのが、プロレスのリング場。 その横に…

小説 aim 88 ー佐々木

佐々木は、どんな風に説明すれば伝わるだろうと考えるが、どれもタクシー運転手の納得する様な答えが思いつかない。 死者からの伝えたい気持ちを届けることは出来るのに、肝心な自分のことは上手く伝えられない。 労働と言う考えがないから、お金はいらない…

小説 aim 87 ー佐々木

「 こんばんは。今夜は冷えますね 」と佐々木は言う。 「 あのさ、ここはなんの店なんだろ? 」とタクシー運転手は言う。 「 図書館です 」と佐々木は言う。 「 図書館?俺には遊園地に観えるけど」 タクシー運転手は、佐々木のネームプレートを見て驚く。 …

小説 aim 86 ー佐々木

「 君だけが特別じゃないんだ。みんな一人一人が、誰かにとって特別なんだ。だからその力の事で、もう悩んだりしなくていい 」と真下は言った。 あの言葉で、佐々木は全てを受け入れる事が出来た。 誰かが言ってくれるのを、ずっと待っていたかも知れない。 …

小説 aim 85 ー佐々木

ある時、真下は佐々木に言った。 「 ねぇ、君はその力を特別だと感じる? 」 「 はい。今でも時々、怖くて眠れなくなります。前よりは、だいぶそんな日は減ったけど 」 「 実はね、君にはそれ以上に特別な力がある。力と言うよりは才能と呼ぶかもしれない 。…

小説 aim 84 ー佐々木

佐々木の父親の友人が、うちの図書館でボクの助手をしないかい?と言った。 その図書館は、全ての本のコーナーで実際に体験できる仕組みになっている。 例えば、ジャズレーベル、ブルーノートの本の隣には、ブルーノートの最新作まで視聴、購入が出来る。 楽…

小説 aim 83 ー佐々木

15歳の佐々木には、人の目に見えないものが見れる。 人には、聴こえない言葉が聴こえる。 死んでしまった人の伝えたかった言葉や、想いを届けることができる。 彼らは《 心眼師 》と呼ばれていて、殆どの人がその存在を知らない。 佐々木は、その力をなるべ…

小説 aim 82 ー千春

佐川急便の男は、誰かと電話をしている。 騙されているとも知らずに可哀想。 騙し方は違うとしても、騙された男は、みんな同じ顔をするのね、と千春は想う。 やがて佐川急便の客は店から出ていく。 私は、彼の後を追う。 「 私の父親は、長尾隆史です 」と千…

小説 aim 81 ー千春

「 これから君は、新しい名前と、新しい家と、新しい家族で暮らして行くんです。誰かを騙して金をもらう必要もない 」とその男は言った。 佐川急便の客がケーキ屋に入ってくる。 「 こんばんは 」と千春は言う。 「 あれ?佐川急便の人来ませんでしたか?こ…

小説 aim 80 ー千春

ある時、変態プレイを好む男に出逢った。 いつも通り寝た後、金をもらう。 そのつもりだった。 男は裸のままの千春の両手に手錠をかけた。 両足を鉄パイプのベットにかけて、千春が身動きをとれないようにした。 「 ボクのペットにしてあげるね 」と男は言っ…

小説 aim 79 ー千春

それから千春は、男を騙して金を奪った。 男はみんな単純で馬鹿だった。 股さえ広げれば、金は面白い様に入ってきた。 好きな時間に起きて、好きな服を着て、好きな食べ物を食べた。 世の中は、金が全てだと知った。 否定は誰にもさせなかった。 教師は、そ…

小説 aim 78 ー千春

炎が徐々に部屋を焼き尽くし、煙で前が見えなくなり、息が出来なくなる。 まだ死にたくない、と千春は想った。 窓ガラスを椅子で割り、2階のベランダから千春は飛び降りた。 3階建てのアパートはみるみる炎に包まれていった。 丁度、今日みたいに静かに雪が…

小説 aim 77 ー千春

3年前から千春は《 長尾家 》の娘として生きている。 偽造家族とは言え、長尾も母親も千春に優しく接してくれる。 まるで本当の家族の様だと千春は想う。 千春の本当の家族は、事業で失敗して焼身自殺をした。 「 一緒に死んでくれないか? 」と父親は言った…

小説 aim 76 ー千春

なんで、私がケーキ屋なんかでバイトしなきゃいけないのよ、と長尾の娘、千春は想う。 「 今日だよ 」と僕は言う。 「 今日、佐川急便の男がケーキ屋にやってくる。君は何も知らないと言えばいい。そして帰り際に、私の父は長尾隆史です、と言って欲しい 」 …

小説 aim 75 ー常盤

「 ケーキ屋でトラブルにあったって俺に電話しただろ? 」 「 ケーキ屋?あぁ今朝話したケーキ屋か。あと一件配達したら行こうと思ってた所だよ 」と八田は言った。 おいおい、何なんだよコレはと常盤は思う。ショーケースに映った自分の顔が歪んでいくのが…

小説 aim 74 ー常盤

常盤はケーキ屋に入る。 「 こんばんは 」と感じの良い挨拶で、女性の店員が迎えてくれる。 「 あれ?佐川急便の人来ませんでしたか?このケーキ屋で何かトラブルがあったみたいですけど 」 「 いや、佐川急便の方は観ていませんが 」と女性店員は言った。 …

小説 aim 73 ー常盤

「 悪くないでしょ? 」とタクシーの運転手は言った。 「 そうですね。ジャズの事は詳しくないけど何か落ちつきます 」と常盤は言った。 「 それにこのタクシーは、真空管アンプを積んでるんですよ。特別な人の為に、特別に造られたタクシーです 」 タクシー…