素敵な図書館

毎週土曜、夜11時に僕、佐藤が自作小説をアップしていくブログです。コーヒー、あるいはお酒を飲みながら訪問していただけたら嬉しいです

2015-03-01から1ヶ月間の記事一覧

小説 あなたと夜と音楽と 14

セロニアス・モンクに出会ったその日の夜、私は奇妙な夢を観る。 私はバス停にいる。 誰かを待っている。幾つかのバスが私の前に止まり通り過ぎて行く。 私はしびれを切らし、そのバス停から離れようとする。 でも動けない。 足元を観ると幾つもの手が私の足…

小説 あなたと夜と音楽と 13

「 私が妻とこの店に? 」 「 そうだよ。アンタの奥さんの仕事場がこの店の近くにある。仕事帰りに二人で来ていた。アンタは、カレーとホットコーヒーを、奥さんはタコライスとビールを注文していた 」 頭が痛くなり耳鳴りがしてきた。私は何も思い出させず…

小説 あなたと夜と音楽と 12

男は私の方を振り向く。 「 可笑しいな。何故、私はジャズミュージシャンばかりに出会うのだろう? 」とアンタは想うんだろう? 彼は笑いながら話す。 「 数日前にエレベーターで、ソニー・ロリンズにも会いました 」 と私は言う。 「 知ってるよ、それも。…

小説 あなたと夜と音楽と 11

いつの間にか隣りに男が座っている。 「 ジャズ喫茶で煙草を吸えないなんて、馬鹿げてると思わないか? 」 と男は言う。 「 私は、煙草を吸わないので特に気にならないんです 」 私は間抜けな意見を述べる。そんな事どうでもいいじゃないか。 「 アンタの奥…

小説 あなたと夜と音楽と 10

セロニアス・モンクの『5BY MONK BY5 』オリジナル版があった。 思わず笑ってしまう。 妻が出ていったのに中古レコード屋で笑ってるのは私ぐらいだろう。 近くのジャズ喫茶『 YURI 』に寄る。 入口から一番遠いカウンターの席に座る。カレーとホットコーヒ…

小説 あなたと夜と音楽と 9

妻が出ていってから一週間が過ぎた。 私の生活に変化はない。なんの不満も不備もなく穏やかな一週間だった。 私はそもそも結婚をしていたのか。 試しに友人に電話で聞いてみた。12年も一緒に過ごしてたらしい。 休日になる度に中古レコード屋に出かける。 …

小説 あなたと夜と音楽と 8

「 まだ、君は解らないんだよ。でも年を重ねれば解るようになる。世の中で大切な事は大体シンプルなんだ。大丈夫だよ。君がこの曲を好きになってくれた様に、解る時が来る。 」 私は目を開ける。 「 Americana 」が終わる。 そこで短い拍手が彼に贈られる。 …

小説 あなたと夜と音楽と 7

「 聴いてくれる人がいるから、あなたは弾くことができるんですよ? 」私は呆れながら問いかける。そんな事、考えれば分かることだろう、と私は想う。「 誰も頼んでない。僕はピアノが好きで弾いてるだけなんだよ。とってもシンプルなんだ。わざわざ人の評価…

小説 あなたと夜と音楽と 6

私は二杯目のコーヒーを飲みながら、キース・ジャレットのレコード『 Dark Intervals 』をターテーブルにセットして、ソファーに横になる。 3曲目「 Americana 」が特に気に入っている。 目を閉じて聴いてると、果てしなく広がる雪原の大地が浮かぶ。 そこ…

小説 あなたと夜と音楽と 5

遅かれ早かれこうなっていただろう。一緒に食事をしたのいつだったか上手く思い出せない。 妻は私と会話をしていたのではなく壁に話しかけていた。その度に自分が透明になってしまった感覚に襲われた。 夜勤明け仕事から帰ってくると妻は出ていってしまった…

小説 あなたと夜と音楽と 4

男はその力を使う事によって、自分の心を殺していくことになる。 本人は気付かない。時間の感覚が可笑しくなる。思い出が消えてしまう。自分が今まで何をしてきて、どこから来たのか判らなくなる。 でもそれは仕方ない、男が人々にしてきたことだ。 まず男は…

小説 あなたと夜と音楽と 3

「 結局、父親は身体を壊して働けなくなりました。寝てることが多くなり、私に汚い言葉を投げかける様になりました。私が寝てる時、枕を押し付けられて殺されそうになった事もありました。それでも、私は父親を憎んだ事はありません。父親を利用した彼等を憎…

小説 あなたと夜と音楽と 2

「 フォローありがとうございます。私もジャズが好きです。今、ジャズミュージシャンが出てくる小説を書いてます。 」 男とはツイッターで知り合う アカウント名は、那須 信也 スタン・ゲッツとセロニアス・モンクが好きらしくこの人とは気が合うと想うよう…

小説 あなたと夜と音楽と 1

暗い部屋で考える。なぜ僕らは繋がらなければならないのか。出会った事もない人達と、これから出会う筈もない人達と。世界は変わろうとしてるのかも知れない。いや、もう変わってしまったのだろう。冷蔵庫の唸り声が誰かの返事の様に聞こえた。ある人は芸能…

小説 その話はやめておこう 3

これは何を意味しているのだろう? 301号室の封筒かもしれない。 303号室の封筒かもしれない。 誰かが間違えて、ボクの部屋に入れたかもしれない。 いや、違うな。 ボクがこの封筒を捨てても、また違う色の封筒が届くだろう。 終わらせる必要がある。 毎日、…

小説 その話はやめておこう 2

ボクはソファに寝転びながら、ビールを飲んでる。 アルパチーノは、ゲイの恋人の手術費の為に銀行強盗をしている 哀しい話だ。 誰かを守る為に、誰かを傷つけていた。 ボクは気が楽だ。 守る人も、傷つけたい人もいない。 玄関のインターホンが鳴る。 時計を…

小説 その話はやめておこう 1

ボクの机の上に白い封筒が置いてある。 誰が置いたのだろう? どこにでもある白い封筒。 封筒に触れてみる。 宛先は書いてない。 名前も書いてない。 『 領収書 』とも『 納品書 』とも書いてない。 首をかしげてる姿を大袈裟にしてみる。 「 どうしたの? …

小説 火星ラバー 3

僕は最終手段を出す事にした。 このままじゃ、本当に地球人になってしまう。 地球人になるのは、7000回生まれ変わってもごめんだ。 「 君は< 世界のはじっこ >がどんな場所か分かる? 」 「 何もない所かしら? 」 「 そうなんだ、そこには何もない。山も海…

小説 火星ラバー 2

今度は、こっちが泣く番だった。 僕は火星では3人の女と結婚して、24人の子供がいる。 「 洗濯機を壊したのは、わざとだね? 」 「 あなたは火星に帰れなくなるから 」 「 それで、僕は地球人にする気だね? 」 僕は、頭が痛みだしてきた。 このままじゃ、本…

小説 火星ラバー 1

「 あなたに謝らないといけない事があるの 」 「 謝らなくていいよ、どうせ浮気でしょ? 」 僕は彼女の浮気グセには慣れていた。 イイ女には男が寄ってくるのだ。仕方ない。 「 その何倍もヒドイ事なの 」 と彼女は言った。 「 どんなことを聞いても怒らない…

小説 夜のニワトリ 17

「 ロボットのお前には、心がない。それでも、お前と関わる人間に、愛が生まれる。それは、ロボットと人間がこれから共存していく為に必要なものなんだ 」と博士ロボは言う。 隣を見たら、シルクorムッシュは泣いている。 「 51年前から、この計画を立ててい…

小説 夜のニワトリ 16

「 ロボットには、心がない。どれだけ、技術が進歩しようが心だけは、備えれない。人間の様に、涙を流す事も出来ない 」と博士ロボは言う。 「 だから、リトルラジオが必要だった訳ですね。そもそも、リトルラジオは、どんなものなんですか? 」と僕は言う。…

小説 夜のニワトリ 15

「 その情報を流したのは、俺だよ 」とシルクは言う。 訳が分からなかった。 これじゃ、まるで博士に試させられている気分だ。 そう思った時、僕はピンときた。 博士は、僕らを、確かに試している。 「 それに俺は、シルクじゃない。本名は、ムッシュだ 」と…

小説 夜のニワトリ 14

「 質問があるわ 」と博士の娘は言う。 「 何故、博士は、博士のロボットを作ったのか。それと、もう一つ、何故、博士のロボットが、アップルにいるのか。雰囲気的に、あなたが、アップルのボスに見えるわ 」 答えるばい、と博士ロボ言う。 「 夜のニワトリ…

小説 夜のニワトリ 13

「 ねぇ、さっき言ったのホント?」と博士の娘は小声で話す。 「 えっ? 」 「 あなたしか撃たれないのかしら? 」と博士の娘は言う。 「 分かりません。でも何かいい方法が必ずあります 」と自信はないけど、僕は言う。 いや、違うな、必ずあるはずだ。 階…

小説 夜のニワトリ 12

「 お嬢ちゃん、名前は? 」とシルクは言う。 「 言う必要はないわ 」と博士の娘は言う。 「 物語には名前が必要だ 」とシルクは言う。 やれやれ、僕の真似じゃないか。 「 名前が無ければ、お嬢ちゃんは大した役じゃないかも知れない 」 「 この光線銃で、…

小説 夜のニワトリ 11

博士は、2020年に、人間とロボットが共存していく道か、対立し合う道かが決まると言っていた。対立し合う道を選ぶのがアップルだと言うのか。 「 直接、僕が確かめます 」 「 危険過ぎるわ 」 「 大丈夫。最後に正義は勝つ様に出来ている 」と僕は言う。 「 …

小説 夜のニワトリ 10

「 そもそも、そのリトルラジオの意味が分からないんです。僕に埋め込められている事は知っているんですけど 」 「 あなたが知らないのに、私が知る訳ないじゃない?知らない物をどうやって守るって言うのよ 」 この意見にも同感だった。 博士の娘とは気が合…

小説 夜のニワトリ 9

「 ちょっと起きなさいよ!! 」 誰かが、僕は強く揺らしている。 せっかく、気持ちのいい夢を観ていたのに。 え?ロボットが夢を観るのかって? そんなの当たり前だよ。 火星人だって夢を観る。 仕方なく、僕は目を開ける。 目の前に白髪のアフロ頭がある。…

小説 夜のニワトリ 8

男は、それについて考えている。 名前がないと、チョイ役で終わる? そんなのってないぜ! シルクだ、と男は言う。 「 俺の名前は、シルクだ!分かったか! 」と怒鳴った。 シルクか。。。。。 もっとマシな名前は無かったんだろうか。 心から、そう想った。…