素敵な図書館

毎週土曜、夜11時に僕、佐藤が自作小説をアップしていくブログです。コーヒー、あるいはお酒を飲みながら訪問していただけたら嬉しいです

2015-02-01から1ヶ月間の記事一覧

小説 夜のニワトリ 6

< 2020年 > 2020年、9月18日アップルの新商品が発売した。 丁度、その頃『 シルク 』と名乗る男に僕は、捕まっていた。 病院の外のドアを飛びながら、窓拭きをしていた時だった。 窓ガラスの向こうで、僕に手振りでジェスチャーをしている男がいた。 何を伝…

小説 夜のニワトリ 5

博士は注射を取り出して、博士の娘に打った。 何を急に?と博士の娘は声を荒げて言った。 「 今から、お前を冷凍睡眠する 」と博士は言った。 博士の娘は、自分の父親が頭が可笑しくなってしまったと本気で思ってしまった。 「 お前を2020年まで、冷凍睡眠す…

小説 夜のニワトリ 4

僕は言葉が話せない。 二足歩行ではなくキャタピラ。 両手は上下しか動かせない。 身長は135㎝。 顔の表情だって、ワンパターン。 驚きも、笑いも、悲しみも表現できない。 おまけに、夜しか動けない。 2020年に存在するロボットとは、あまりにもかけ離れて…

小説 夜のニワトリ 3

< 1969年 > 1969年、ビートルズがアップルの屋上で、最後のライブをしていた。 丁度その頃、博士は38001回目の失敗作を造っていた。 「 まだ、諦めないのね 」と博士の娘は言った。 「 これは、単なる過程ばい 」と博士は言った。 博士の娘は、失敗作を眺め…

小説 夜のニワトリ 2

満員電車や上司のつまらないジョークからも解放された。 殆どの人が余った時間で、自分の好きな事をやり始めた。 個人で始める会社が爆発的に増えた。 勿論、ロボットをスタッフにした。 正確で人間よりずっとタフだった。 ここまで書いた文章を読み返してみ…

小説 夜のニワトリ 1

真夜中に架かる虹のように 昼間に輝く星のように 夏に降り注ぐ雪のように それは それは 新しかった 砂漠で観るシロクマのように 都会で観るオーロラのように 火星で観る生命のように それは それは 美しかったから - RADWIMPS - 謎謎 2020年、僕等の生活は…

小説 素敵な図書館 6

ボクの前に『 忘却カード 』が差し出される。 名前の欄に『 佐藤 圭祐 』と書かれている。 やあ、と館長は言った。 「 今回は、僕の記憶を引き取ってくれないかな 」 ボクはカードの裏を見て、館長の顔を見る。 『 図書館を造った記憶 』と書かれている。 「…

小説 素敵な図書館 5

「 だったら、母親が運転中にスマートフォンを観ていた事実を引き取ろうか? 」とボクは言った。 男の子は少し考えた後、出来れば全部消したい、無理ですか?と言った。 「 母親は常にスマートフォンを観ていました。一緒に食事をしている時もです。何だか自…

小説 素敵な図書館 4

「 ご両親は、そんな事、望まれているのでしょうか? 」と正直にボクは言った。 年配の男性はしばらく考えた後、判りません、と言った。 出口はあった。ただ、それが答えかボクにも判らなかった。 結局、その年配の男性に、記憶を貸し出す事になった。 一週…

小説 素敵な図書館 3

記憶を引き取った人は、大抵の人が喜んでくれた。 ボクの手をとり「 ありがとう! 」と涙する人もいた。 ボクは嬉しかった。 簡単に人々は、忘れたい記憶を消せるのだ。 館長はボクの肩をポンと叩き、ねっとウィンクした。 ある女性は旦那さんの暴力に悩んで…

小説 素敵な図書館 2

今度、新しい事を始めるよ、と館長は言った。 また、仕事が増えるなと想うと同時に、楽しみでもあった。 「 人の記憶を貸し出せる 」コーナーを作ると館長は言った。 どうやら、ボクが専門でここに入る事になるらしい。 「 人には忘れたい記憶がある。それを…

小説 素敵な図書館 1

ボクは図書館で働いている。 この図書館は、小さな小さな街にある。 電話帳にも、グーグルマップにも載っていない。 そんな図書館があるわけないじゃないか? と、あなたは怒るかも知れない。 そんな事、言われても困る。 ボクは、確かにこの図書館で働いて…