2015-01-01から1年間の記事一覧
「 ボクの父親は、自分が子どもだった頃、ボクと同じ様に、サンタさんに心待ちにして、プレゼントに喜んでいたと思います。その風景をボクと重ねていたと想う 」と真下は言う。 「 あなたの母親も、昔は子どもだった。あなたの母親が子どもだった頃、楽しか…
「 朝、目覚めるとベッドの上にプレゼントが置いてあります。朝の日差しで宙に舞っている埃がキラキラ光って、宝石の様に観えます。サンタさんは、必ず、ボクが望んだオモチャを持ってきてくれるんです。ボクは、父親に、サンタさんがやってきた!と言います…
白木は顔をあげ真下の顔をみる。 真下は何が言いたいんだろう? コーヒーは少し前に注がれたばかりのに、もう冷たくなっている。 「 あのレコードを聴いていると、クリスマスの夜の思い出が蘇ってくるんです。ボクが寝る前に『 サンタさんに手紙は書いた?』…
「 母親?あなたの母親は、あなたの味方じゃないんですか? 」 「 私達を追っていた人間は《 お前達を許さない 》と言ったわ。その言葉を聞いて、私の存在自体が、彼が母親の心を殺す原因になったんじゃないか、と感じたの 」と白木は言う。 「 私は、誰にも…
「 誰かが私達を追いかけてくるの。《 私達を追っているのは、君の良く知っている人間だ。いいかい?何があっても、後ろを振り返ってはいけない。振り返ってしまったら、君はここから出られなくる 》と彼は言い、ヴィレッジヴァンガードに向かう 」と白木は…
「 何も心配しなくても、大丈夫です。明日、予定通り、那須信也に会いに行きましょう 」と真下は言う。 白木は、コーヒーカップの中を覗きこんだまま黙る。 その中に、あるべき答えを探してる様に観える。 「 昨日の夜、図書館で夢を見たの。私は、那須信也…
真下と白木は『 ホテルニューオータニ博多 』のロビーで話しをしている。 ケニーバレルの『 ミッドナイトブルー 』が流れている。 もう少し、クリスマスに合うジャズだったら良いのにと真下は想う。 「 佐々木くんは、一緒じゃないんですか? 」と真下は言う…
「 う〜ん。言われてみればそうかもな 」と小久保は首を捻る。 「 灘丘さんは元気だろうか 」と小久保は独り言の様に呟く。 「 彼の記憶はこの図書館で引き取っています。灘丘さんは、その後、全くの別人になりました。顔も変わっていたんです 」 記憶を引き…
「 灘丘さんが直接、ここに来てベルトを寄付してくれたんです 」 「 灘丘さんは、俺の憧れだったんだ 」と小久保は言う。 佐々木は、小久保が灘丘と一緒の施設で育った事を知っている。 「 俺は、タクシーに乗る前は、プロレスをやっていた 」 佐々木は、勿…
「 女に決まってるだろ 」 「 次に好きなものは? 」 「 プロレスかな 」 「 じゃあ、プロレスの本のコーナーに行きましょう。地下にあります 」 2人は地下に行きプロレスの本のコーナーに行く。 まず目に飛び込んできたのが、プロレスのリング場。 その横に…
佐々木は、どんな風に説明すれば伝わるだろうと考えるが、どれもタクシー運転手の納得する様な答えが思いつかない。 死者からの伝えたい気持ちを届けることは出来るのに、肝心な自分のことは上手く伝えられない。 労働と言う考えがないから、お金はいらない…
「 こんばんは。今夜は冷えますね 」と佐々木は言う。 「 あのさ、ここはなんの店なんだろ? 」とタクシー運転手は言う。 「 図書館です 」と佐々木は言う。 「 図書館?俺には遊園地に観えるけど」 タクシー運転手は、佐々木のネームプレートを見て驚く。 …
「 君だけが特別じゃないんだ。みんな一人一人が、誰かにとって特別なんだ。だからその力の事で、もう悩んだりしなくていい 」と真下は言った。 あの言葉で、佐々木は全てを受け入れる事が出来た。 誰かが言ってくれるのを、ずっと待っていたかも知れない。 …
ある時、真下は佐々木に言った。 「 ねぇ、君はその力を特別だと感じる? 」 「 はい。今でも時々、怖くて眠れなくなります。前よりは、だいぶそんな日は減ったけど 」 「 実はね、君にはそれ以上に特別な力がある。力と言うよりは才能と呼ぶかもしれない 。…
佐々木の父親の友人が、うちの図書館でボクの助手をしないかい?と言った。 その図書館は、全ての本のコーナーで実際に体験できる仕組みになっている。 例えば、ジャズレーベル、ブルーノートの本の隣には、ブルーノートの最新作まで視聴、購入が出来る。 楽…
15歳の佐々木には、人の目に見えないものが見れる。 人には、聴こえない言葉が聴こえる。 死んでしまった人の伝えたかった言葉や、想いを届けることができる。 彼らは《 心眼師 》と呼ばれていて、殆どの人がその存在を知らない。 佐々木は、その力をなるべ…
佐川急便の男は、誰かと電話をしている。 騙されているとも知らずに可哀想。 騙し方は違うとしても、騙された男は、みんな同じ顔をするのね、と千春は想う。 やがて佐川急便の客は店から出ていく。 私は、彼の後を追う。 「 私の父親は、長尾隆史です 」と千…
「 これから君は、新しい名前と、新しい家と、新しい家族で暮らして行くんです。誰かを騙して金をもらう必要もない 」とその男は言った。 佐川急便の客がケーキ屋に入ってくる。 「 こんばんは 」と千春は言う。 「 あれ?佐川急便の人来ませんでしたか?こ…
ある時、変態プレイを好む男に出逢った。 いつも通り寝た後、金をもらう。 そのつもりだった。 男は裸のままの千春の両手に手錠をかけた。 両足を鉄パイプのベットにかけて、千春が身動きをとれないようにした。 「 ボクのペットにしてあげるね 」と男は言っ…
それから千春は、男を騙して金を奪った。 男はみんな単純で馬鹿だった。 股さえ広げれば、金は面白い様に入ってきた。 好きな時間に起きて、好きな服を着て、好きな食べ物を食べた。 世の中は、金が全てだと知った。 否定は誰にもさせなかった。 教師は、そ…
炎が徐々に部屋を焼き尽くし、煙で前が見えなくなり、息が出来なくなる。 まだ死にたくない、と千春は想った。 窓ガラスを椅子で割り、2階のベランダから千春は飛び降りた。 3階建てのアパートはみるみる炎に包まれていった。 丁度、今日みたいに静かに雪が…
3年前から千春は《 長尾家 》の娘として生きている。 偽造家族とは言え、長尾も母親も千春に優しく接してくれる。 まるで本当の家族の様だと千春は想う。 千春の本当の家族は、事業で失敗して焼身自殺をした。 「 一緒に死んでくれないか? 」と父親は言った…
なんで、私がケーキ屋なんかでバイトしなきゃいけないのよ、と長尾の娘、千春は想う。 「 今日だよ 」と僕は言う。 「 今日、佐川急便の男がケーキ屋にやってくる。君は何も知らないと言えばいい。そして帰り際に、私の父は長尾隆史です、と言って欲しい 」 …
「 ケーキ屋でトラブルにあったって俺に電話しただろ? 」 「 ケーキ屋?あぁ今朝話したケーキ屋か。あと一件配達したら行こうと思ってた所だよ 」と八田は言った。 おいおい、何なんだよコレはと常盤は思う。ショーケースに映った自分の顔が歪んでいくのが…
常盤はケーキ屋に入る。 「 こんばんは 」と感じの良い挨拶で、女性の店員が迎えてくれる。 「 あれ?佐川急便の人来ませんでしたか?このケーキ屋で何かトラブルがあったみたいですけど 」 「 いや、佐川急便の方は観ていませんが 」と女性店員は言った。 …
「 悪くないでしょ? 」とタクシーの運転手は言った。 「 そうですね。ジャズの事は詳しくないけど何か落ちつきます 」と常盤は言った。 「 それにこのタクシーは、真空管アンプを積んでるんですよ。特別な人の為に、特別に造られたタクシーです 」 タクシー…
「 えぇ、世界中が寄ってたかって自分を嵌めようと企んでるんじゃないかって想うくらい、おかしな事が続いてるんですよ。まさか、これがクリスマスプレゼントじゃないよな 」と常盤は独り言の様な愚痴をこぼす。「 お客さん、この曲でも聴いて落ち着いて下さ…
「 結局、その人は入院していなかったんです。いや、そんな事言われても困ります。騙してる様に想えなかったんですよ?その時、たまたま八田から電話があてケーキ屋に向かったんです。誰だって俺と同じ行動をしますよ。え?警察に電話するのが当たり前? 」 …
常盤は病院を出てタクシーに乗り、ケーキ屋に向かう。 青い封筒を捨ててしまおうか迷ったが、結局胸ポケットにしまう。 俺は何をしているんだろう? 仕事中だぞ?と想う。 コンビニでパンクした後、大人しくJAFを待っていれば良かったんだ。 上司に報告する…
「 マズイ事になった 」と八田は言った。 電話の向こう側から、嫌な予感が八田の押し殺した声から伝わる。 「 実は、こっちもだいぶマズイんだ 」と常盤は言った。 いつもなら笑ってくれる八田だが、笑い声は聞こえない。 「 今朝、話したケーキ屋で俺が買い…