小説 aim 78 ー千春
炎が徐々に部屋を焼き尽くし、煙で前が見えなくなり、息が出来なくなる。
まだ死にたくない、と千春は想った。
窓ガラスを椅子で割り、2階のベランダから千春は飛び降りた。
3階建てのアパートはみるみる炎に包まれていった。
丁度、今日みたいに静かに雪が降っていた日だった。
千春はその家事で、右肩を火傷した。
鏡で観る度、父親と母親の事を思い出す。
私がベランダから、飛び降りるまで彼らは「 逃げないでくれ 」と叫んでいた。
この右肩には、彼らの憎しみが染み込んでいる。