小説 aim 76 ー千春
なんで、私がケーキ屋なんかでバイトしなきゃいけないのよ、と長尾の娘、千春は想う。
「 今日だよ 」と僕は言う。
「 今日、佐川急便の男がケーキ屋にやってくる。君は何も知らないと言えばいい。そして帰り際に、私の父は長尾隆史です、と言って欲しい 」
「 理由は聞かない欲しい 」と僕は言う。
「 それが終わったら、君はケーキ屋のバイトを辞めていい。もう長尾家に帰らなくていい。偽造家族ごっこは終わりだよ。僕は、これからは一切干渉しない。君は自由だよ 」
「 約束よ 」と千春は言う。