小説 あなたと夜と音楽と 23
「 これ以上は関わらない方がいい 」
ドアの向こう側で声がした。
注意深く聴かないと聞こえない、とても小さな声だった。
「 アンタは充分頑張ったよ。でも、相手が悪過ぎる。引き返した方がいい。ドアを開けたらアンタは二度と戻って来れない。同じドアをくぐる事が出来ない。アンタはいろんなものを失う。数秒前の自分ではいられなくなるんだ。それでも行くんだね? 」
「 関係のない人を巻き込んでしまったんです 」
と僕は言った。
「 大切な人なんだね? 」
「 とても 」