2015-04-08 小説 あなたと夜と音楽と 22 小説 ジェリー・マリガンは言った。 「 小説を書き続けるんだよ 」と。 駄目なんだよ、私には書くべき事がもう何ひとつないんだ。何も書けないんだ。 その言葉を遮りジェリー・マリガンは続ける。 「 一日も休んではいけない。書き続けるんだよ 」と。 私はレコードプレイヤーを叩き割った。 悪いのは私じゃないんだよ。悪いのは、このレコードを送った男なんだ。 一度でいい、一度でいいから妻に会わせて欲しい。 ジェリー・マリガンの返事を待つ。 風がカーテンを静かに揺らしている。 もう、私は自分の心も殺してしまった。