素敵な図書館

毎週土曜、夜11時に僕、佐藤が自作小説をアップしていくブログです。コーヒー、あるいはお酒を飲みながら訪問していただけたら嬉しいです

小説 あなたと夜と音楽と 16

ジェリー・マリガンの「 WHAT IS THERE TO SAY? 」のレコードに針を落とす。

キッチンのカウンターに座り目を閉じる。

ふいに涙が零れる。

私は誰の為に泣いているんだろう。

妻は出て行ったのではなかった。

ドアを開けたのは私自身だった。

妻は私を引き止めてくれていたのだろう。

足の痣を撫でながら想った。そして、妻の心でさえ私は殺してしまったのだろう。

「 気付くのが遅すぎたね 」と肩に手をかけられる。

後ろを振り向かなくても、それが誰か私は分かる。