素敵な図書館

毎週土曜、夜11時に僕、佐藤が自作小説をアップしていくブログです。コーヒー、あるいはお酒を飲みながら訪問していただけたら嬉しいです

小説『 二十肩 』1

「 二十肩ですね、これは 」と何でもなさそうに整体師は言った。 「 二十肩?聞いたことないですね 」 「 コンビニでトイレだけ借りて、何も買わない人がなりやすいんですよ 」とやはり何でもなさそうに整体師は言った。 参ったな、と頭をかきながら思った。…

小説 aim 133 ー那須

「 ボクもそろそろ行くよ。ボクにだって待ってくれている人がいる 」とジェリーマリガンは言う。 「 ねぇ、君は佐藤なんだろう? 」と那須は言う。 ジェリーマリガンは、それには応えず「 小説を書くのは、どんな場所でも書けるよね?また君の新作が読みたい…

小説 aim 132 ー那須

「 私は妻に会えるんですか? 」と那須は言う。 ジェリーマリガンは頷く。 「 会いたい人がいるのは、とても素敵な事だよ。それを待ってくれている人がいる。此処まで来るのに、君を待ってくれていたんだよ 」とジェリーマリガンは言う。

小説 aim 131 ー那須

「 《 キミは多くの人を巻き込んでる。彼等は誰かの親であり、子どもであり、恋人なんだ。その人達の心も殺してる事になる。彼等の為に出来る事は、もう一つしかない。小説を書き続ける事だよ。一日も休んではいけない。毎日書くんだ 》とボクは言ったよね?…

小説 aim 130 ー那須

那須の肩に手をかける人がいる。 那須は、それが誰かが判る。 そこで彼は気付く。 《 私は死んだはずだ 》 ここは、何処なんだ? 「 小説を書き続けた君だから、分かった事があるだろ? 」とジェリーマリガンは言う。 彼はやはり、那須のイメージ通りだった…

小説 aim 129 ー那須

目を覚ましたら部屋の中は真っ暗だった。 今何時だろう? 酷く汗をかいてる。 台所でミネラルウォーターを飲む。 頭が痛くてそのまま冷蔵庫の前で座り込む。足にも痛みが残っている。 電気を点けて確認すると足に幾つも痣が残っている。 那須は、ジェリー・…

小説 aim 128 ー白木

家に帰ったら、母と買い物に出かけよう。 滅多に食べない甘いものを母と食べよう。 母が今まで観てきたものを、大切にしてきたものを、目を背けてきたものを、私は母と受け止めて行こう。 3人の顔がぼやけてみえる。 「 ようやく泣けた 」と白木は笑った。

小説 aim 127 ー白木

私なら、彼に近づけると思っていたのではないだろうか? いずれにせよ、母は那須信也に会う事は出来なかった。 私達が那須信也の息子、信晴に監禁されている間に那須信也は息を引き取っていた。 「 新しい人生をスタートしたかったら、いつでも連絡して下さ…

小説 aim 126 ー白木

「 本当に会わなくていいんですか? 」と佐々木は言う。 白木は頷き「 ありがとう。でも、もういいの 」と言う。 「 すっきりした様な、してない様な。でも、あなたがそう想うなら、それで良いと想う 」と真下は苦笑いをする。 結局、那須信也は私の父親では…

小説 aim 125 ー小久保

「 あなたに、ありがとうが言いたくて来たんです。図書館の館長の助手が言ったんです。《 伝えたい気持ちがある時は、生きている間に伝えるべき 》って 」 「 佐々木くん? 」 「 そうです。15歳の子どもに教えられるなんて笑えますよね 」と小久保は言った…

小説 aim 124 ー小久保

「 《 父親がいなければ、俺は、この世に存在していないんだよ。それにどんなクソみたいな父親でも、たった一人の父親だからな 》と俺の頭を撫でながら笑っていました。その時、俺はあなたの様な人間になりたいと思いました。強くて心の優しい人間に 」 「 …

小説 aim 123 ー小久保

長い沈黙の後「 人違いです。私は櫻井です 」とドアの反対側から声がする。 「 あの図書館に行きました。人の記憶を引き取ってくれる図書館です。灘丘さんの記憶を俺は借りました。灘丘さんがプロレスラーの時の記憶です 」と小久保は言った。 「 あなたは俺…

小説 aim 122 ー小久保

部屋の中で誰かが咳払いした気配がする。 「 灘丘さん、一緒の施設で育った小久保です。あなたに会いたくて此処まできました 」とドアをノックしながら小久保は言った。 ズルズルと何かを引きずった音がする。 その音はドアのすぐ反対側で止まった。

小説 aim 121 ー小久保

『 安曇荘 』は高層ビルに挟まれる様に建っていた。 二階建てのアパートは朽ち果ていて、外には洗濯機があり洗濯物が不幽霊の様に風でなびいていた。 ポストは野晒しで設置しており、ペンキが剥げて錆びついていた。 小久保は103号室の名前を確認したが、書…

小説 aim 120 ー長尾

「 以前、一緒に暮らしていた事がある。と言っても3カ月程度だけどな 」 「 この写真に写っている女性は、白木紗江子さんと、あなたのお子さんです 」と中学生は言う。 「 ちょっと待ってくれ?お前は一体誰なんだよ?俺に子ども? 」 「 すみません、名前…

小説 aim 119 ー長尾

「 それを説明するのは、とても難しいです。あなたは、多分、信じない 」と中学生は言う。 「 俺が殺し屋をやっていた事は知っているんだろう? 」 「 知っていますよ 」 「 俺がガキを殺さないって聞いた事はないんだろう? 」 「 少なくとも、この蕎麦屋で…

小説 aim 118 ー長尾

「 こう言う事です 」と中学生は、卓上にあるアンケート用紙にペンで書き出す。 《 灘丘 》→ 《 櫻井 》 → 《 長尾 》 と書いた後、大きな文字で《 aim 》と書く。 「 坊主、何故、それを知っている? 」と長尾は言う。 もう、偽装家族ごっこをしている長尾…

小説 aim 117 ー長尾

「 その言葉は、あなたのお兄さんが書いたものです 」と目の前に座っていた中学生が言う。 この中学生は一体何を言っているのだろう? この青い封筒が机に置いてあった事は、会社の部下だけだ。 「 君は人違いをしているよ 」と当然の事の様に言う。

小説 aim 116 ー長尾

君が産まれたあの日を 僕はずっと忘れない 君が産まれたあの日は 世界が輝いていた 僕が産まれたあの日に 戻れるなら伝えたい 産まれてきた喜びを ありがとうって伝えたい それは命と命を繋ぐリレーの様で 僕から君へと 君からあなたへと 「 ありがとう 」と…

小説 aim 116 ー長尾

君が産まれたあの日を 僕はずっと忘れない 君が産まれたあの日は 世界が輝いていた 僕が産まれたあの日に 戻れるなら伝えたい 産まれてきた喜びを ありがとうって伝えたい それは命と命を繋ぐリレーの様で 僕から君へと 君からあなたへと 「 ありがとう 」と…

小説 aim 115 ー長尾

長尾は、会社の近くの蕎麦屋に昼食をとりにいく。 天ぷら蕎麦が美味しくて有名で、サラリーマンやOLで店内は混雑している。 料理が運ばれるのを待っていたら、店員に相席を頼まれる。 すみません、と苦笑いを浮かべた男の子が長尾の席の前に座る。 中学生だ…

小説 aim 114 ー長尾

週明け長尾は出社すると、自分の机の上に青い封筒が置いてあるのに気付く。 その封筒に宛先や名前は書かれていない。 「 今度はオレの机に置いてあった 」と長尾は部下に言う。 部下は、自分と同じ体験をした長尾をみて可笑しくて笑う。 「 課長、ひょっとし…

小説 aim 113 ー八田

「 俺の弟に上手く届きましたか? 」と櫻井から留守番が入っている。 大丈夫だよ、と八田は想う。 週末明けには、長尾の会社の机の上には届いている。もっとも直接渡した方が早い。ただ長尾は信じないだろう。それに顔を変えてしまった者同士は、会えないル…

小説 aim 112 ー八田

「 ケーキ屋でトラブルにあったって俺に電話しただろ? 」と常盤は電話ごしに言う。 「 ケーキ屋?あぁ今朝話したケーキ屋か。あと一件配達したら行こうと思ってた所だよ 」と八田は言う。 悪いな、常盤。 同僚を利用することはしたくないけど、こればっかり…

小説 aim 111 ー八田

「 信晴さんの言った通り、配達ルートは変えてもらいましたよ 」と八田は言う。 「 ありがとうございます。助かります 」と信晴は言う。 「 でも大丈夫ですかね?この計画。上手く行くかな 」 「 大丈夫です。途中でトラブルがあっても帳尻が合う様に組んで…

小説 aim 110 ー八田

「 また選挙始まるだろ?そしたら、またグチグチ言いだす奴がいるんだよ。やれ、私たちの生活は!やれ、消費税反対!政治が世界を動かしてるわけじゃないのによ。せっせと働いてる人達が、世界を動かしてるのにな 」と八田は言う。 「 急で悪いんだけどさ、…

小説 aim 109 ー八田

八田は佐川急便で働いている。 お歳暮の宅配が多く、毎日、夜遅くまで配っている。 事務所の喫煙所で煙草を吸っている同僚の常盤に、ジョージアの缶コーヒーを差し出す。 「 世界は、誰かの仕事でできている。あのCM好きなんだよなぁ 」と八田は言う。 「 確…

小説 aim 108 ー信晴

「 父がその能力を使っていたのは《 あなたと夜と音楽と 》を書いていた時期だけだと思います。いずれにせよ、白木さんが本当に父の子どもなのか調べます 」 そう言って真っ赤の扉を閉め信晴は部屋を後にした。

小説 aim 107 ー信晴

「 僕は《 aim 》と呼ばれる組織のリーダーです 」と信晴は言う。 「 元犯罪者達に、全く新しい人生をスタートさせる手伝いをしています。彼らに整形をし、新しい名前と、新しい家を与えます。それは警察も知っている事です 」 「 まさか、そんな事はありえ…

小説 aim 106 ー信晴

「 父にとっては、今書いてる小説が最後の作品になると思います。そんな中、あなた達が突然押しかけてきた。そして父は動揺しています。何故、このタイミングなんでしょう?もし、あなた達の唯の勘違いだとしたら、僕は絶対にあなた達を許さない 」と信晴は…