素敵な図書館

毎週土曜、夜11時に僕、佐藤が自作小説をアップしていくブログです。コーヒー、あるいはお酒を飲みながら訪問していただけたら嬉しいです

小説『 愛を知っているならパスタで踊れ 』1

「 私を愛しているなら、パスタを食べ続けなさいよ。そして踊り続けなさい 」と彼女は言った。冷蔵庫には順番待ちのパスタでドアが閉まらず、なお3つの鍋がもくもく湯気をたて僕の眼鏡を曇らせていた。 こんな事を言ってしまうと世の中の女性を敵にしてしま…

小説『 二十肩 』10

「 わたしも以前は二十肩でした 」と整体師は言い、頭のこめかみを右人差し指で、トン、トンと叩いた。ノグチさんもタケマルさんも同じです、と整体師は言った。 「 あんたと仲間ってことだよ 」とミシュランマン1号は言った。 これ以上はここにはいられな…

小説『 二十肩 』9

「 説明は終わりました。ノグチさん、タケマルさん、入ってきて下さい 」と整体師は言った。 ドアを開けて二人組が入ってきた。ミシュランマンがこんがり日焼けしたみたいな二人だった。どちらがノグチさんでタケマルさんなのか見分けがつかず、双子だと言わ…

小説『 二十肩 』8

「 あなたが傷つけてきた相手は、あなたの母親だけではありません。幼稚園の時、鉄棒の逆上がりができない大原忍くんを馬鹿にしたことがありますね。彼は今だにあなたに馬鹿にされた夢を見てます。小学校でも特別学級の佐藤弥生さんのロッカーにバッタの死骸…

小説『 二十肩 』7

「 確かに傷つけてきました。それが故意に傷つけてなくても 」と素直に認めた。 「 生まれた日、あなたは母親を傷つけているんですよ 」と整体師は言った。 整体師は一体何を言っているのだろう? 「 よく意味が分かりません。母親がなぜ傷ついてるんですか…

小説『 二十肩 』6

「 きっと不安だからだと思います。みんなと同じ考え方じゃないと、そこからはじかれてしまいそうで。同じ料理を食べて、同じ服を着て、同じ本を読んで、同じ映画を観る。そうすることで自分は世界と繋がっていると確認したいです。そう想うことは自然なこと…

小説『 二十肩 』5

「 世の中には、様々な考え方、生き方の人がいます。生まれた環境も物事の捉え方も違います。ジャズと同じです。同じ曲でも演奏者によって全く違う。その演奏を聴く人の精神状態や聴く時間によっても受け止め方が変わってきます。素敵だと思ったり、逆にジャ…

小説『 二十肩 』4

整体師の言ってることはよく判った。通勤で満員電車に揺られている人々は、誰かと戦っているように、何かに怯えるように下を向いている。しかし他人から見たら自分もそう見えるのだろう。 でも、と人々は思う。それは自分だけじゃない、ここにいる全員がそう…

小説『 二十肩 』3

「 身体の歪みは、心の歪みからきています 」と整体師は言った。 「 日々、穏やかな心でいれば身体を痛めることは勿論、歪めることもありません。来店される方の多くは、それは難しいと言われます。家族や職場や友人関係の中では、日々いろんなことが起こり…

小説『 二十肩 』2

「 007を”ゼロゼロセブン”と呼びます 」 「 えっ?違うんですか? 」 「 正しくは”ダブルオーセブンです 」 「 ゼロゼロセブンと呼ぶ人は二十肩になりやすいんですね? 」 整体師は当たり前と言わんばかりに深く頷いた。 整体師は必要以上に日焼けをして…

小説『 二十肩 』1

「 二十肩ですね、これは 」と何でもなさそうに整体師は言った。 「 二十肩?聞いたことないですね 」 「 コンビニでトイレだけ借りて、何も買わない人がなりやすいんですよ 」とやはり何でもなさそうに整体師は言った。 参ったな、と頭をかきながら思った。…

小説 aim 133 ー那須

「 ボクもそろそろ行くよ。ボクにだって待ってくれている人がいる 」とジェリーマリガンは言う。 「 ねぇ、君は佐藤なんだろう? 」と那須は言う。 ジェリーマリガンは、それには応えず「 小説を書くのは、どんな場所でも書けるよね?また君の新作が読みたい…

小説 aim 132 ー那須

「 私は妻に会えるんですか? 」と那須は言う。 ジェリーマリガンは頷く。 「 会いたい人がいるのは、とても素敵な事だよ。それを待ってくれている人がいる。此処まで来るのに、君を待ってくれていたんだよ 」とジェリーマリガンは言う。

小説 aim 131 ー那須

「 《 キミは多くの人を巻き込んでる。彼等は誰かの親であり、子どもであり、恋人なんだ。その人達の心も殺してる事になる。彼等の為に出来る事は、もう一つしかない。小説を書き続ける事だよ。一日も休んではいけない。毎日書くんだ 》とボクは言ったよね?…

小説 aim 130 ー那須

那須の肩に手をかける人がいる。 那須は、それが誰かが判る。 そこで彼は気付く。 《 私は死んだはずだ 》 ここは、何処なんだ? 「 小説を書き続けた君だから、分かった事があるだろ? 」とジェリーマリガンは言う。 彼はやはり、那須のイメージ通りだった…

小説 aim 129 ー那須

目を覚ましたら部屋の中は真っ暗だった。 今何時だろう? 酷く汗をかいてる。 台所でミネラルウォーターを飲む。 頭が痛くてそのまま冷蔵庫の前で座り込む。足にも痛みが残っている。 電気を点けて確認すると足に幾つも痣が残っている。 那須は、ジェリー・…

小説 aim 128 ー白木

家に帰ったら、母と買い物に出かけよう。 滅多に食べない甘いものを母と食べよう。 母が今まで観てきたものを、大切にしてきたものを、目を背けてきたものを、私は母と受け止めて行こう。 3人の顔がぼやけてみえる。 「 ようやく泣けた 」と白木は笑った。

小説 aim 127 ー白木

私なら、彼に近づけると思っていたのではないだろうか? いずれにせよ、母は那須信也に会う事は出来なかった。 私達が那須信也の息子、信晴に監禁されている間に那須信也は息を引き取っていた。 「 新しい人生をスタートしたかったら、いつでも連絡して下さ…

小説 aim 126 ー白木

「 本当に会わなくていいんですか? 」と佐々木は言う。 白木は頷き「 ありがとう。でも、もういいの 」と言う。 「 すっきりした様な、してない様な。でも、あなたがそう想うなら、それで良いと想う 」と真下は苦笑いをする。 結局、那須信也は私の父親では…

小説 aim 125 ー小久保

「 あなたに、ありがとうが言いたくて来たんです。図書館の館長の助手が言ったんです。《 伝えたい気持ちがある時は、生きている間に伝えるべき 》って 」 「 佐々木くん? 」 「 そうです。15歳の子どもに教えられるなんて笑えますよね 」と小久保は言った…

小説 aim 124 ー小久保

「 《 父親がいなければ、俺は、この世に存在していないんだよ。それにどんなクソみたいな父親でも、たった一人の父親だからな 》と俺の頭を撫でながら笑っていました。その時、俺はあなたの様な人間になりたいと思いました。強くて心の優しい人間に 」 「 …

小説 aim 123 ー小久保

長い沈黙の後「 人違いです。私は櫻井です 」とドアの反対側から声がする。 「 あの図書館に行きました。人の記憶を引き取ってくれる図書館です。灘丘さんの記憶を俺は借りました。灘丘さんがプロレスラーの時の記憶です 」と小久保は言った。 「 あなたは俺…

小説 aim 122 ー小久保

部屋の中で誰かが咳払いした気配がする。 「 灘丘さん、一緒の施設で育った小久保です。あなたに会いたくて此処まできました 」とドアをノックしながら小久保は言った。 ズルズルと何かを引きずった音がする。 その音はドアのすぐ反対側で止まった。

小説 aim 121 ー小久保

『 安曇荘 』は高層ビルに挟まれる様に建っていた。 二階建てのアパートは朽ち果ていて、外には洗濯機があり洗濯物が不幽霊の様に風でなびいていた。 ポストは野晒しで設置しており、ペンキが剥げて錆びついていた。 小久保は103号室の名前を確認したが、書…

小説 aim 120 ー長尾

「 以前、一緒に暮らしていた事がある。と言っても3カ月程度だけどな 」 「 この写真に写っている女性は、白木紗江子さんと、あなたのお子さんです 」と中学生は言う。 「 ちょっと待ってくれ?お前は一体誰なんだよ?俺に子ども? 」 「 すみません、名前…

小説 aim 119 ー長尾

「 それを説明するのは、とても難しいです。あなたは、多分、信じない 」と中学生は言う。 「 俺が殺し屋をやっていた事は知っているんだろう? 」 「 知っていますよ 」 「 俺がガキを殺さないって聞いた事はないんだろう? 」 「 少なくとも、この蕎麦屋で…

小説 aim 118 ー長尾

「 こう言う事です 」と中学生は、卓上にあるアンケート用紙にペンで書き出す。 《 灘丘 》→ 《 櫻井 》 → 《 長尾 》 と書いた後、大きな文字で《 aim 》と書く。 「 坊主、何故、それを知っている? 」と長尾は言う。 もう、偽装家族ごっこをしている長尾…

小説 aim 117 ー長尾

「 その言葉は、あなたのお兄さんが書いたものです 」と目の前に座っていた中学生が言う。 この中学生は一体何を言っているのだろう? この青い封筒が机に置いてあった事は、会社の部下だけだ。 「 君は人違いをしているよ 」と当然の事の様に言う。

小説 aim 116 ー長尾

君が産まれたあの日を 僕はずっと忘れない 君が産まれたあの日は 世界が輝いていた 僕が産まれたあの日に 戻れるなら伝えたい 産まれてきた喜びを ありがとうって伝えたい それは命と命を繋ぐリレーの様で 僕から君へと 君からあなたへと 「 ありがとう 」と…

小説 aim 116 ー長尾

君が産まれたあの日を 僕はずっと忘れない 君が産まれたあの日は 世界が輝いていた 僕が産まれたあの日に 戻れるなら伝えたい 産まれてきた喜びを ありがとうって伝えたい それは命と命を繋ぐリレーの様で 僕から君へと 君からあなたへと 「 ありがとう 」と…

小説 aim 115 ー長尾

長尾は、会社の近くの蕎麦屋に昼食をとりにいく。 天ぷら蕎麦が美味しくて有名で、サラリーマンやOLで店内は混雑している。 料理が運ばれるのを待っていたら、店員に相席を頼まれる。 すみません、と苦笑いを浮かべた男の子が長尾の席の前に座る。 中学生だ…

小説 aim 114 ー長尾

週明け長尾は出社すると、自分の机の上に青い封筒が置いてあるのに気付く。 その封筒に宛先や名前は書かれていない。 「 今度はオレの机に置いてあった 」と長尾は部下に言う。 部下は、自分と同じ体験をした長尾をみて可笑しくて笑う。 「 課長、ひょっとし…

小説 aim 113 ー八田

「 俺の弟に上手く届きましたか? 」と櫻井から留守番が入っている。 大丈夫だよ、と八田は想う。 週末明けには、長尾の会社の机の上には届いている。もっとも直接渡した方が早い。ただ長尾は信じないだろう。それに顔を変えてしまった者同士は、会えないル…

小説 aim 112 ー八田

「 ケーキ屋でトラブルにあったって俺に電話しただろ? 」と常盤は電話ごしに言う。 「 ケーキ屋?あぁ今朝話したケーキ屋か。あと一件配達したら行こうと思ってた所だよ 」と八田は言う。 悪いな、常盤。 同僚を利用することはしたくないけど、こればっかり…

小説 aim 111 ー八田

「 信晴さんの言った通り、配達ルートは変えてもらいましたよ 」と八田は言う。 「 ありがとうございます。助かります 」と信晴は言う。 「 でも大丈夫ですかね?この計画。上手く行くかな 」 「 大丈夫です。途中でトラブルがあっても帳尻が合う様に組んで…

小説 aim 110 ー八田

「 また選挙始まるだろ?そしたら、またグチグチ言いだす奴がいるんだよ。やれ、私たちの生活は!やれ、消費税反対!政治が世界を動かしてるわけじゃないのによ。せっせと働いてる人達が、世界を動かしてるのにな 」と八田は言う。 「 急で悪いんだけどさ、…

小説 aim 109 ー八田

八田は佐川急便で働いている。 お歳暮の宅配が多く、毎日、夜遅くまで配っている。 事務所の喫煙所で煙草を吸っている同僚の常盤に、ジョージアの缶コーヒーを差し出す。 「 世界は、誰かの仕事でできている。あのCM好きなんだよなぁ 」と八田は言う。 「 確…

小説 aim 108 ー信晴

「 父がその能力を使っていたのは《 あなたと夜と音楽と 》を書いていた時期だけだと思います。いずれにせよ、白木さんが本当に父の子どもなのか調べます 」 そう言って真っ赤の扉を閉め信晴は部屋を後にした。

小説 aim 107 ー信晴

「 僕は《 aim 》と呼ばれる組織のリーダーです 」と信晴は言う。 「 元犯罪者達に、全く新しい人生をスタートさせる手伝いをしています。彼らに整形をし、新しい名前と、新しい家を与えます。それは警察も知っている事です 」 「 まさか、そんな事はありえ…

小説 aim 106 ー信晴

「 父にとっては、今書いてる小説が最後の作品になると思います。そんな中、あなた達が突然押しかけてきた。そして父は動揺しています。何故、このタイミングなんでしょう?もし、あなた達の唯の勘違いだとしたら、僕は絶対にあなた達を許さない 」と信晴は…

小説 aim 105 ー信晴

「 誰かを憎むことは、哀しいことです。誰かに憎まれることも哀しい。もし、その原因があなたにあるとしたら、話し合うべきです 」と真下は言った。 「 分かった。しばらくの間、彼女と2人きりにして欲しい 」と那須は言ったー 「 それで、父との話で何か解…

小説 aim 104 ー信晴

「 小説のタイトルもジャズの曲で、素敵だなと想います。それに影響されてジャズを集める様になったんです。那須さんの小説を読んでるとジャズが聴きたくなる。ジャズを聴いてると那須さんの小説を読みたくなります 」と真下は言った。 那須は頷き「 ありが…

小説 aim 103 ー信晴

「 決定的な証拠はないわ。でも母は、私はあなたの子どもだと言っているわ。そして、心も殺されたと 」と白木は言った。 「 心を殺された?父さん、この人達は父さんの熱狂的なファンなんだ。父さんが書いた小説をなぞって、父さんに近づきたかっただけなん…

小説 aim 102 ー信晴

「 あなたは母を家から追い出した。精神を病んでしまったあなたを必死に救おうとしたのに。その時、母のお腹の中には私がいました 」と白木は言った。 「 その事は、本当にすまないと思っている。ただ、君がお腹にいた事は、私は知らされていないんだ 」と那…

小説 aim 101 ー信晴

「 その話が本当なら、あなたと僕は兄弟ですね 」と信晴は言う。 「 私はごめんだわ。姉を縄で縛りつける弟なんて 」と白木は言う。 「 何も殺そうなんて思っていませんよ。今、急いで調べてもらっています。それが解ったらあなた達は自由です 」と信晴は言…

小説 aim 100 ー真下

「 そうね。そうかも知れない 」と白木は笑う。 もう必要以上に怯えるのは止めにしようと、白木は想う。 どんな真実が、この先に待っていようと焦る事はない。 私は母親の味方であり、母親は私の味方なのだ。 それは、どんな力を持っていたとしても、引っく…

小説 aim 99 ー真下

白木は静かに頷き「 あなたと話していると、私が今まで否定してきた過去が、肯定されていく感じだわ 」と言う。 「 ボクは単純に必要以上に怯えたくない。起こりもしない事に悩んだりしたくないんです。そう言うのを能天気と言うかも知れないけど 」 「 それ…

小説 aim 98 ー真下

「 ボクの父親は、自分が子どもだった頃、ボクと同じ様に、サンタさんに心待ちにして、プレゼントに喜んでいたと思います。その風景をボクと重ねていたと想う 」と真下は言う。 「 あなたの母親も、昔は子どもだった。あなたの母親が子どもだった頃、楽しか…

小説 aim 97 ー真下

「 朝、目覚めるとベッドの上にプレゼントが置いてあります。朝の日差しで宙に舞っている埃がキラキラ光って、宝石の様に観えます。サンタさんは、必ず、ボクが望んだオモチャを持ってきてくれるんです。ボクは、父親に、サンタさんがやってきた!と言います…

小説 aim 96 ー真下

白木は顔をあげ真下の顔をみる。 真下は何が言いたいんだろう? コーヒーは少し前に注がれたばかりのに、もう冷たくなっている。 「 あのレコードを聴いていると、クリスマスの夜の思い出が蘇ってくるんです。ボクが寝る前に『 サンタさんに手紙は書いた?』…