素敵な図書館

毎週土曜、夜11時に僕、佐藤が自作小説をアップしていくブログです。コーヒー、あるいはお酒を飲みながら訪問していただけたら嬉しいです

小説 ルーザー 4 ー座敷童

「 坊主、オレの言葉が解るのか? 」

と黒猫は言った。

「 うん 」と少年は言った。

公園で、少年と黒猫は向き合いながら、話している。

遠くから見たら、1人の少年が猫と戯れている。普通はそう想う。

「 なんだか、オレの好きな小説家の物語に似ているな 」と黒猫は言った。

「 それは知らないな 」と少年は言った。

「 猫と話せる奴がいる。ある猫探しをしていて、猫を残酷に殺している奴に出会うんだ 」

と黒猫は言った。

「 あぁ。似ているかも。毎週土曜日に猫を殺す人間がいるんです 」と少年は言った。

黒猫は、静かに少年を見つめる。

犯人は、少年じゃないかと考える。

なんせこの少年は、オレ達と話せる。

心を許した猫達が、彼に殺されても不思議ではない。

「 白猫の三郎さんに頼まれたんです。あなたに伝えて欲しいって 」と少年は言った。

「 何故、直接言いに来ない 」と黒猫は言った。

「 他の白猫達に見られたらまずいって。白猫と黒猫は仲が悪いんですか? 」

と少年は言った。

「 オマエ等、人間の方が仲は悪いじゃないか。オレ達は色の違いで殺し合いまでしない 」と黒猫は言った。

少年は、何度も転校を繰り返してきた。

違う街に移り友達ができる。

少年は、友達には見えないものが見れる。

聞こえない言葉が聞こえる。

ふと、それが友達に気づかれてしまう。

不気味がられ、やがて少年は1人ぼっちになる。

「 その力を恥じる事はない 」

と少年の父親は言う。

「 私たちは、そういう一族なの 」

と少年の母親は言う。

「 生きてる間には、伝えきれなかった言葉や想いを届ける事ができる 」

と少年の父親は言う。

だったら僕は、と少年は言う。

「 僕が生きている間に、伝えるね。2人も伝えてね 」

「 それが一番いいわね 」

と少年の母親は微笑む。