小説 ルーザー 5 ージキルとハイド
数え切れない程、砂時計が並んでいる。
そのどれもが、砂の残りがわずかなものばかりだ。
「 今日は何人だ? 」
と兄のハイドは言う。
「 13252人 」
と弟のジキルは言う。
「 今日も多いな 」
と兄のハイドは言う。
「 でも、ありがたい事だよ。人間の哀しみで僕らは生きていけるんだし 」
と弟のジキルは言う。
「 死神が生きていくのも、楽じゃない 」
と兄のハイドは言う。
彼らは、砂時計を一つ一つ撫でる。
ゆっくり撫でた後、口に入れる。
13252個を時間をかけて入れていく。
これは、彼らなりの儀式の様なものだ。
毎日繰り返している。
砂時計が止まる分だけ、命が止まっていく。
「 でも、不思議なものだな 」
と砂時計を口に入れた後、ハイドは言う。
「 寿命に、善人も悪人も関係ない。善人が長生きする訳でもなく、悪人が早く死ぬ訳でもない。むしろ、ずる賢く生きている奴の方が長く生きている 」
「 兄さん、じゃあ選んじゃう?悪人の砂時計だけ選んでしまおうか? 」
と弟のジキルは言う。
「 いや例外はない。ルールは守る為にある 」
と兄のハイドは言う。
「 ウルトラの父の言葉だね 」
と弟のジキルは言う。
「 いや、俺の言葉だ 」
と兄のハイドは言う。