素敵な図書館

毎週土曜、夜11時に僕、佐藤が自作小説をアップしていくブログです。コーヒー、あるいはお酒を飲みながら訪問していただけたら嬉しいです

小説 ルーザー 5 ージキルとハイド

数え切れない程、砂時計が並んでいる。

そのどれもが、砂の残りがわずかなものばかりだ。

「 今日は何人だ? 」

と兄のハイドは言う。

「 13252人 」

と弟のジキルは言う。

「 今日も多いな 」

と兄のハイドは言う。

「 でも、ありがたい事だよ。人間の哀しみで僕らは生きていけるんだし 」

と弟のジキルは言う。

「 死神が生きていくのも、楽じゃない 」

と兄のハイドは言う。

彼らは、砂時計を一つ一つ撫でる。

ゆっくり撫でた後、口に入れる。

13252個を時間をかけて入れていく。

これは、彼らなりの儀式の様なものだ。

毎日繰り返している。

砂時計が止まる分だけ、命が止まっていく。

「 でも、不思議なものだな 」

と砂時計を口に入れた後、ハイドは言う。

「 寿命に、善人も悪人も関係ない。善人が長生きする訳でもなく、悪人が早く死ぬ訳でもない。むしろ、ずる賢く生きている奴の方が長く生きている 」

「 兄さん、じゃあ選んじゃう?悪人の砂時計だけ選んでしまおうか? 」

と弟のジキルは言う。

「 いや例外はない。ルールは守る為にある 」

と兄のハイドは言う。

ウルトラの父の言葉だね 」

と弟のジキルは言う。

「 いや、俺の言葉だ 」

と兄のハイドは言う。