素敵な図書館

毎週土曜、夜11時に僕、佐藤が自作小説をアップしていくブログです。コーヒー、あるいはお酒を飲みながら訪問していただけたら嬉しいです

小説『 モダン・アート 』1

  正直な話、僕が失業中でなければその友人の誘いは断っていた。高校の時に同じクラスメートで、卒業した後は彼と顔をあわせる事はなかった。僕は就職して、彼は大学生になった。

彼から電話がかかってきた時、懐かしさより驚きの方が強く本当に彼の声だという確信を持てなかった。僕は押入れから卒業アルバムを引っ張り出し、名前と顔を確認した。彼は23号線沿いにある回転寿しのスシローに食事に行こう俺が奢るよと言った。

 8年間働いた会社にリストラを告げられた。上司はすまないと、下を向いて僕に告げた。幸い僕には養わなければならない家族はいなかった。失業手当をもらっている間、幾つかの会社に書類を送ったがいい返事はもらえなかった。

 回転寿しのスシローで待ち合わせをすることになった。昼時にもかかわらず駐車場には車が一台しか停まってなかった。いつも警備員がいるぐらい混んでいる店なのに不思議だなと思った。店内から手を挙げながら小太りの男が出てきた。

「 永瀬君だよね? 」と小太りの男は言った。
「 そうだよ、ひょっとして武丸君? 」と僕は言った。

 小太りの男はガハハと大きく口を開け、久しぶり、と笑った。歳を重ねたせいでもあるけど彼は昔の面影が全くなかった。こうも人の外見は変わるのか。相手もそう思ってるかもしれない。いずれにせよ、ほんの少しの間思い出話をして食事を奢ってもらう。それ以後は会うつもりなどなかった。最初に言った様に失業中でなければ誘いは断っていた。