小説『 愛を知っているならパスタで踊れ 』5
「 食べないの? 」と僕は言った。
私はいいわ、と手をひらひらさせて、マイケル・ジャクソンのデンジャラスだったら、あなたはどんなパスタを作る?と彼女は言った。
「 イカスミパスタかな 」と僕は言って冷蔵庫を開けてみた。
「 なんで? 」
「 5曲目か6曲目かにブラック・オア・ホワイトって曲があるんだけど 」
「 タイトルに黒がつくからね、選ぶのね 」
「 うん、でもアオリイカなんて買ってきてないよね? 」
「 買ってあるわ、ちゃんと冷蔵庫をみて 」
鮭や帆立の横にアオリイカはちゃんとあった。
僕はアオリイカをさばき身と足を切り、イカのスミ袋と肝をパスタの茹で汁と一緒に混ぜ、みじん切りした玉ねぎとニンニクを炒め、白ワインで熱してそこにアオリイカを入れた。
マイケル・ジャクソンは相変わらずマイケル・ジャクソンのままで歌い続けていた。彼は何故亡くなってしまったんだろう?たった1人の人間を世界中が愛してるという事実を彼の音楽を聴く度に思い知らされる。