素敵な図書館

毎週土曜、夜11時に僕、佐藤が自作小説をアップしていくブログです。コーヒー、あるいはお酒を飲みながら訪問していただけたら嬉しいです

小説『 二十肩 』10

「 わたしも以前は二十肩でした 」と整体師は言い、頭のこめかみを右人差し指で、トン、トンと叩いた。ノグチさんもタケマルさんも同じです、と整体師は言った。

「 あんたと仲間ってことだよ 」とミシュランマン1号は言った。

これ以上はここにはいられない、変な宗教団体の勧誘に違いない。新しくできた整体院とはいえきちんと調べるべきだった。

急に視界が暗くなる。慌てて椅子から転げ落ちそうになるが両手を掴まれ膝がついた格好になり、そのまま引き摺られる。呼吸が上手くできず声が出せない。

「 大丈夫。それほど痛くない。あっと言う間だ。傷だって目立たない 」とミシュランマン2号は言った。

「 彼らに任せとけば心配はありません。このまま、あなたが二十肩だと傷つく人々が増えていきます。一緒に穏やかな心を取り戻しましょう。わたし達と同じようになれば、これから先、無意味に傷つけなくて済むのです 」と整体師は言った。

薄れていく意識の中で、自分だって傷ついてきたんだよと想った。