小説 番人 3
僕は離婚したばかりだし、時間はたっぷりあった。
月に1度なら無理もなく通えて『 さつき食堂 』でうなぎを食べて、ここに来るのも悪くないな、と思った。
僕は、よろしくお願いします、と西嶋に言った。
それから僕は毎月、西嶋の家に通う様になった。
「 父のおかげで私は、こうして絵を描いていけるだけの生活ができてるんです 」と西嶋は言った。
西嶋は父と暮らしていたこの家を、父の死後譲り受けたらしい。
築42年の平屋でくたびれているが、庭は広くよく手入れされている。
向日葵が太陽に向かって真っ直ぐ咲いていて、縁側には真夏の光が降り注いでいる。
「 絵はいつから描いているんですか? 」
「 興味を持ち出したのは、小学校6年生の時です。夏休みの宿題で描いた絵が先生に褒められたのが嬉かったんです。丁度、ここから観た向日葵を描いていました 」
休憩をする時、縁側に座りながら、日常の会話を僕らはした。
グラスの氷が心地よい音を立てて溶けていった。
「 点描画に興味を持ちだしたのは、ずっと後です。原因不明で左眼の視力がなくなっていた時です。私は絵を描くのを辞めようと思っていました 」