素敵な図書館

毎週土曜、夜11時に僕、佐藤が自作小説をアップしていくブログです。コーヒー、あるいはお酒を飲みながら訪問していただけたら嬉しいです

小説 ルーザー 1 ージキルとハイド

駅のホームで、人身事故を知らせるアナウンスが流れる。

人々は心の中で舌打ちをする。

今週何度めだよ、自殺するなら他所でしてくれよと。

人々は、同情しない。

今日も生きる為に働いてるのだ。満員電車に揺られて。

面白くもない仕事をして。

「 兄さん、同じ場所で同じやり方が3回も続くと、流石に怪しまれるよ 」弟のジキルが言う。

「 よく言うだろ?生き方は選べるけど、死に方までは選べないって 」兄のハイドが言う。

一つの頭に二つの顔。

正面から観て、左側がジキル。右側がハイド。

ジキルは青の顔。ハイドは赤の顔を持っている。

腕、体、足は緑色をしている。

ジキルとハイドは、寿命がきた人間を死なせる死神。

「 誰の言葉だよ 」弟のジキルが言う。

「 決まってるだろ、ウルトラの父だよ、ウ・ル・ト・ラ・の・チ・チ 」兄のハイドが言う。

「 絶対にウソでしょ、それ? 」弟のジキルは言う。

弟のジキルが話している時、

兄のハイドは目を閉じる。

兄のハイドが話している時、

弟のジキルは目を閉じる。

彼ら( 一つの肉体に二つの顔を持っているので、そう呼ぶことにする )は、人間や動物に憑依する。

彼らは人間や動物に憑依し、寿命がきた人間を間接的に死に至らしめる。

憑依された人間や動物は、その時の記憶を失っている。

「 悪いね 」とジキルは言う。

憑依された青年は、目を覚ます。

目の前の人身事故に唖然とする。