小説 ルーザー 1 ージキルとハイド
駅のホームで、人身事故を知らせるアナウンスが流れる。
人々は心の中で舌打ちをする。
今週何度めだよ、自殺するなら他所でしてくれよと。
人々は、同情しない。
今日も生きる為に働いてるのだ。満員電車に揺られて。
面白くもない仕事をして。
「 兄さん、同じ場所で同じやり方が3回も続くと、流石に怪しまれるよ 」弟のジキルが言う。
「 よく言うだろ?生き方は選べるけど、死に方までは選べないって 」兄のハイドが言う。
一つの頭に二つの顔。
正面から観て、左側がジキル。右側がハイド。
ジキルは青の顔。ハイドは赤の顔を持っている。
腕、体、足は緑色をしている。
ジキルとハイドは、寿命がきた人間を死なせる死神。
「 誰の言葉だよ 」弟のジキルが言う。
「 決まってるだろ、ウルトラの父だよ、ウ・ル・ト・ラ・の・チ・チ 」兄のハイドが言う。
「 絶対にウソでしょ、それ? 」弟のジキルは言う。
弟のジキルが話している時、
兄のハイドは目を閉じる。
兄のハイドが話している時、
弟のジキルは目を閉じる。
彼ら( 一つの肉体に二つの顔を持っているので、そう呼ぶことにする )は、人間や動物に憑依する。
彼らは人間や動物に憑依し、寿命がきた人間を間接的に死に至らしめる。
憑依された人間や動物は、その時の記憶を失っている。
「 悪いね 」とジキルは言う。
憑依された青年は、目を覚ます。
目の前の人身事故に唖然とする。