小説 夜のニワトリ 7
そんな訳で、僕はまんまと捕まっている。
「 攻撃装置は、外しといたよ 」
「 あなたの名前は? 」と僕は言う。
言う必要はないね、と男は言う。
フェアじゃないな。
「 あなたは、僕の名前を知っている。僕はあなたの名前を知らない。全くもってフェアじゃないな 」
「 どうせ、名前でデータを調べるんだろ?騙さるかって 」と男は言う。
ムムムムっと僕は思う。
ムムムムムムムムっ。
「 物語には、名前が必要です。あなたの名前がこのまま与えられないなら、多分、あなたは大した役じゃない 」と僕は言う。
「 物語?役?何のことだよ。鉄パイプで頭が可笑しくなったの?今の状況を観てみろよ。どう考えても、お前はピンチなんだよ。データで入ってないの?こう言うのを絶対絶命って言うんだぜ 」と男は笑いながら言う。
構わず僕は続ける。
「 名前がないなら、多分、あと10ページで死んでしまうと想う。あなたは、敵役だし、最後にヒーローが勝つ様に出来てるんです。悪役が勝つ物語なんて、観たくないし流行らないもん。だから、名前を教えて下さい。多分まだ間に合います。多分 」