素敵な図書館

毎週土曜、夜11時に僕、佐藤が自作小説をアップしていくブログです。コーヒー、あるいはお酒を飲みながら訪問していただけたら嬉しいです

小説 『 強面ライセンス 』1


今更、ボクが言わなくても知ってると思うけど、世の中には二種類の人間がいる。

『 強面の人間 』と『 強面じゃない人間 』だ。

ボクは郊外にあるファミリーマートの店内の監視カメラ。

この『 強面の人間 』と『 強面じゃない人間 』が店に訪れ買い物をして( 勿論、買わない人間もいる )そして出て行く。

『 強面の人間 』を見付けるとボクは本部に警告サインを送る。店内にいる従業員が危険な目にあうかもしれないし、商品が盗まれるかもしれないからだ。

こんなこと言うと「 人間を見た目で判断するもんじゃない!! 」と怒鳴る人間がいる。冷静に、ソファに腰掛け、コーヒーでも飲みながら考えて欲しい。

「 人間は見た目が全て 」だと言う考えに辿り着く筈だ。大抵の強面の人間は、それにあった行動をする。簡単にモノを壊して、簡単に人間を傷つけ、簡単に人間を殺してしまう。大袈裟な話じゃない、ボクはそれを観てきた。この店で。

『 強面の人間 』がよく来る時間は夜の10時から夜中の3時の間。彼らは、あるいは彼女らは申し合わせたように、この時間帯にやってくる。

ボクは本部に警告サインを送り、本部は店内で働く従業員に目立たない様に合図を送る。従業員は安全ルートを確保して、店内にいる『 強面じゃない人間 』に、こっそり知らせる。

「 店内に強面の人間がいます。僕が合図を出したら、こちらから逃げて下さい 」

とは言え、このシステムは完璧ではない。例えば、従業員が『 強面の人間 』に悪意を感じていない人間がいるからだ。そういう人間は自分を『 強面じゃない人間 』だと思っていないし、人間は見た目じゃないと信じきているからだ。ただ残念なことに、この世の中が繰り返してきた歴史の中では、ほぼ、『 強面の人間 』が世の中を最悪の方に導いている。そして、一番初めに犠牲になるのは、、、。

ボクが監視を続けているファミリーマートには、危険に巻き込まれやすい人間が働いている。

彼の名前は「 高田 誠 」彼は24歳でここで働きながらバンドを組んでいる。ボーカルギターをしている。夜中に働き、午後からバンドの練習をする。

彼は言う「 今の音楽はハングリー精神が足りないんだよ。ロックから3万光年もかけ離れてる奴らが人気がある。家に帰れば夜飯を母親に用意してもらえる奴らばかりだ。『 わぁ、母さん、今日のご飯はハンバーグなんだ。僕、嬉しいなぁ。ところで母さん、最近、母親目線で政治に対する考えってある?うん、今度出す新曲の歌詞の参考にしようと思って 』そんな、どうしようもない奴らのせいで週に一回は国会の前でデモをしないと気が済まない奴らが増えてしまったんだ 」