素敵な図書館

毎週土曜、夜11時に僕、佐藤が自作小説をアップしていくブログです。コーヒー、あるいはお酒を飲みながら訪問していただけたら嬉しいです

小説『 二十肩 』6

「 きっと不安だからだと思います。みんなと同じ考え方じゃないと、そこからはじかれてしまいそうで。同じ料理を食べて、同じ服を着て、同じ本を読んで、同じ映画を観る。そうすることで自分は世界と繋がっていると確認したいです。そう想うことは自然なことじゃないかな 」

「 それは穏やかな心と言えません。そう考える人々は人を容易く傷つけます。嘘みたいに。傷つけたことに気付きません。その考えはとても響きはいいように聞こえます。少しはみ出しただけでその人々は怒り呆れ後ろ指を指して、下手をすると命まで奪ってしまう。これは大袈裟なことではないんですよ。実際にそれは起きているんです。毎日、起きている。今、こうしている時でさえ、それは起きている。あなただって知らない内に誰かを傷つけてきたんです 」と整体師は言った。

つい最近、別れたばかりの女の子のことを想った。彼女とは三年付き合っていた。それなり楽しく過ごしていた。ただ結婚のことを彼女を匂わせてきた。まだ自分は結婚などしたくないし、彼女を幸せにする自信もなかった。もっと気軽な関係。そう言うものを求めていた。だから別れることにした。彼女は理由を教えて欲しいと言ったが、上手く伝えることができなかった。どれだけ言葉を選んでもそれらしい言葉が見当たらなかった。