小説『 二十肩 』4
整体師の言ってることはよく判った。通勤で満員電車に揺られている人々は、誰かと戦っているように、何かに怯えるように下を向いている。しかし他人から見たら自分もそう見えるのだろう。
でも、と人々は思う。それは自分だけじゃない、ここにいる全員がそうなんだと。そう思うだけで気が楽になる。間違えていないんだと開き直れる。
「 認めること、受け止めること、手放してしまうこと。それが穏やかな心でいられるコツです。それができてしまえれば何も怖くありません。それができてしまえればスーパーマンにでもなれます 」と整体師は言った。