小説 aim 113 ー八田
「 俺の弟に上手く届きましたか? 」と櫻井から留守番が入っている。
大丈夫だよ、と八田は想う。
週末明けには、長尾の会社の机の上には届いている。もっとも直接渡した方が早い。ただ長尾は信じないだろう。それに顔を変えてしまった者同士は、会えないルールになっている。
八田は今まで出逢って関わった人達の事を想った。
無意味に傷つけていってしまった友人達の事を想った。どれだけ考えても彼らが笑った顔を思い出す事は出来なかった。
静かに降る雪が八田の車の視界を遮る様に、フロントガラスに積もっていた。