小説 番人 9
僕は休みの日になる度、熊本に出かける様になっていた。
信じてもらえないかもしれないが、熊本城を季節毎に訪れた。
春には春の熊本城があり、夏には夏の熊本城があり、秋には秋の熊本城があった。
やはり、冬には冬の熊本城があった。
歴史を越えて存在する建物の呼吸を感じることができた。
熊本の旅館はどこも素敵だった。
その中でも西嶋が紹介してくれた阿蘇にある『 みな和 』が僕はお気に入りだった。
全室離れで客室に露天風呂が付いていた。
敷地内の鯉に餌をあげたり、部屋で心置きなく読書を楽しんだ。
ここで食べる馬刺しが1番美味しかった。
旅館の敷地内に食事処があり個室になっている。
個室の外には立派な能舞台がありプロジェクターから映像を楽しむことができた。
音声は個室の天井スピーカーから流れていた。