小説 番人 4
「 きっかけは友人からもらった元アメリカ兵の点描画です。彼の絵は戦時中の記憶を切り取り描いていました。右腕がない兵士や銃を構えポーズを決めた兵士。中には吊るされた日本兵の首を描いたものもありました。彼自身もやはり左腕がありませんでした。私自身、左眼の視力を失いましたが、幸い両手はあります。好きな絵を描き続ける事が出来る。それから私は紹介制で人々の点描画を描き始めました。観ての通り地味な作業ですが、こうして縁側に座り相手と会話をして、その人その人からの内面を知れます 」
僕は頷き言葉の続きを待った。
西嶋は目を細め軽く欠伸をし、グラスに入った麦茶を一気に飲み干した。
それを待っていたかの様に蝉が一斉に鳴きだした。