小説 ルーザー 12 ー桃太郎とイヌとサルとキジ
時計は19時40分を指していた。
数学教師は、薄暗い教室にいる。
ぼんやり月の明かりだけが、教室に入り込んでいた。
誰もいない教室で、数学教師はうなだれていた。結局の所、私の思い通りには出来ないんだな。
私は、ここの生徒と同じだな。と数学教師は思った。
生徒の父親が連絡があり、私を疑っていた。
どう言えばいいのだろう?私の事を全てさらけ出してしまおうか?
あなたの息子さんが邪魔だったから殺したんです、と。
カランコロン、カランコロンと廊下から音が聞こえてくる。
何かを引きずってる音だろうか。
生徒の父親が来たのだろう。と数学教師は思う。
突然、廊下側の窓ガラスが一斉に割れる。
教室のドアが吹き飛び、数学教師は尻もちをつく。
いつの間にか、見覚えのない男が数学教師の目の前にいる。
「 いいか、よく覚えておけ。お前ら人間が選べるのは生き方だけだ。死に方を決めれるのは、俺たちだ 」
男は棒の様な物で、数学教師の両腕を叩き割る。
数学教師は、悲鳴さえ出せずに気を失う。
「 なぁ、俺たちの仕事を増やすなよな。お前みたいな奴がいるから、この世の中はちっとも良くならない 」
と男は言った。
「 兄さん、ルールを破って僕たち大丈夫かな? 」と弟のジキルが言う。
「 その時は、その時だ。それから考えればいい。死神のくせに何を怯える必要がある? 」