小説 ルーザー 11 ー桃太郎とイヌとサルとキジ
まるで映画の『 仮面の男 』みたいだな、と田野は苦笑いをする。
ディカプリオみたいに男前じゃないし、味方は、たったの1人もいないが。
実が歩道橋から落ちて死亡した、と連絡がきた時、田野は何かの悪ふざけかと思った。
友人と協力して面白がっているのだと。
しかし、それは現実だった。
病院から死亡診断書を受け取る。
この紙切れ一枚で、実はこの世から別れを告げる。
田野は前日の朝、実が何か相談したい事があった雰囲気で学校にでかけた。
休みの日に話すね、と実は言っていた。
田野は夜勤明けで疲れていたので、特に気に留めなかった。
実の話を聞いてあげるべきだった、と田野は自分自身を責めた。
田野は会社をしばらく休む事にした。
何故、歩道橋の上から落ちたのだろう?本当に実は自殺をしたのか?
実の友人が、田野を訪ねてきた。
彼は、市川育男ですと言った。
小学校からの付き合いで、実とは仲が良かったらしい。
僕は信じてないんですけど、と市川育男は言った。
「 最近、近所で猫が残酷に殺されてるんです。その犯人が実だったと噂を聞きました 」
と市川育男は言った。
田野は思わず笑ってしまう。
実は小さな虫さえ怖がって触れない。そんな実が猫を殺すなんて馬鹿げている。
その噂は誰から聞いたの?と田野は言った。
学校の先生です、と市川育男は言った。
「 自分自身に相談があったと、生徒の前で言っていました。皆、それで実は自殺をしたと思ってるんです。でも、僕は信じられません 」と泣きながら言った。
田野は、その先生と会う事にした。
20時でしたら大丈夫です、と相手は言った。
はっきりさせる必要があった。
相手が嘘をついてると思ったら、田野は殺すつもりでいる。田野の右手には金属バットが握られいた。