素敵な図書館

毎週土曜、夜11時に僕、佐藤が自作小説をアップしていくブログです。コーヒー、あるいはお酒を飲みながら訪問していただけたら嬉しいです

小説 ルーザー 10 ー浦島太郎

悪いのは、私じゃない。

悪いのは、あの生徒だ。

私の楽しみを取られたくない。

あれが出来なければ、私はまともに立つこそさえ出来ない。

数学教師は自宅の部屋で震えている。

よく考えろ。

何故、見つかってしまったんだ。

数学教師は、その日の事を何度も何度も繰り返し思い出す。

そして、一つの結論が出る。

私は、わざと誰かに見つかる様に黒猫を殺したんだ。誰かに見て欲しかったんだ。と数学教師は想う。

数学教師は、チャールズ・ミンガスの『 フォギー・ディ 』をかける。

歪められたメロディーと一緒に、数学教師は踊り出す。

悪いのは私じゃない。

悪いのはあの生徒なんだ。

あれが出来なければ、私はこうして踊る事さえ出来ない。

生徒の自殺の噂を、流すのは簡単だった。

数学教師は、数人の生徒と相談した。

「 実は、彼から前々から相談されていたんだ。噂になっている猫殺しは、自分がやっていて、辞めたくても辞められない 」と。

勿論、生徒達はそれを信じた。

この先生が、嘘を言う訳がない。

最近、田野君、調子が悪そうだったのは、そのせいだったのか。

結局、その悩みで自殺したと噂が広がった。