素敵な図書館

毎週土曜、夜11時に僕、佐藤が自作小説をアップしていくブログです。コーヒー、あるいはお酒を飲みながら訪問していただけたら嬉しいです

小説 ルーザー 7 ー桃太郎

ただいまと、田野は言う。

おかえりと、息子の実は言う。

夜勤勤務が終わり帰宅する頃には、実が2人分の朝食を作っている。

大抵は『 なんでもサンド 』が朝食として、テーブルに並んでいる。

今日の『 なんでもサンド 』は、ナポリタンとレタスのサンドだった。

夜働いている田野は実と夕食が食べれない。

実が夕食で作った料理を、パンに挟んでサンドにする。

これを2人は『 なんでもサンド 』と呼んでいた。

「 ねぇ、父ちゃん。なんでいつもスポーツ新聞を買ってくるの?ラジオで結果は知ってるでしょ? 」と実は田野が持っている新聞を指差しながら聞く。

「 どうしてもさ、耳だけじゃ半信半疑なんだよな。この目で確かめたいんだよ 」

「 あぁ、ここで満塁ホームランを打ったんだな~と写真で確認したいんだよ 」

と田野は言う。

「 う~ん 」と実は唸る。

「 例えば実の事がどうしても、どうしても好きな女の子がいる。その噂を実の友達づてで聞くわけだ 」

「 実は、その噂を信じるか? 」

と田野は言う。

「 本人から言われるまで信じないかも 」

と実は言う。

だろ?それと一緒だよ、とサンドを食べながら田野は言う。

朝食を食べ終わった後、軽くシャワーを浴び寝る準備をする。

「 父ちゃん、あのさ 」

と実は言う。

欠伸をしながら、田野は返事をする。

いいや、また休みの日にゆっくり話すよ、と実は言い玄関を開ける。

いってらっしゃいと、田野は言う。