小説 ルーザー 7 ー桃太郎
ただいまと、田野は言う。
おかえりと、息子の実は言う。
夜勤勤務が終わり帰宅する頃には、実が2人分の朝食を作っている。
大抵は『 なんでもサンド 』が朝食として、テーブルに並んでいる。
今日の『 なんでもサンド 』は、ナポリタンとレタスのサンドだった。
夜働いている田野は実と夕食が食べれない。
実が夕食で作った料理を、パンに挟んでサンドにする。
これを2人は『 なんでもサンド 』と呼んでいた。
「 ねぇ、父ちゃん。なんでいつもスポーツ新聞を買ってくるの?ラジオで結果は知ってるでしょ? 」と実は田野が持っている新聞を指差しながら聞く。
「 どうしてもさ、耳だけじゃ半信半疑なんだよな。この目で確かめたいんだよ 」
「 あぁ、ここで満塁ホームランを打ったんだな~と写真で確認したいんだよ 」
と田野は言う。
「 う~ん 」と実は唸る。
「 例えば実の事がどうしても、どうしても好きな女の子がいる。その噂を実の友達づてで聞くわけだ 」
「 実は、その噂を信じるか? 」
と田野は言う。
「 本人から言われるまで信じないかも 」
と実は言う。
だろ?それと一緒だよ、とサンドを食べながら田野は言う。
朝食を食べ終わった後、軽くシャワーを浴び寝る準備をする。
「 父ちゃん、あのさ 」
と実は言う。
欠伸をしながら、田野は返事をする。
いいや、また休みの日にゆっくり話すよ、と実は言い玄関を開ける。
いってらっしゃいと、田野は言う。