小説 ルーザー 4 ー座敷童
「 坊主、オレの言葉が解るのか? 」
と黒猫は言った。
「 うん 」と少年は言った。
公園で、少年と黒猫は向き合いながら、話している。
遠くから見たら、1人の少年が猫と戯れている。普通はそう想う。
「 なんだか、オレの好きな小説家の物語に似ているな 」と黒猫は言った。
「 それは知らないな 」と少年は言った。
「 猫と話せる奴がいる。ある猫探しをしていて、猫を残酷に殺している奴に出会うんだ 」
と黒猫は言った。
「 あぁ。似ているかも。毎週土曜日に猫を殺す人間がいるんです 」と少年は言った。
黒猫は、静かに少年を見つめる。
犯人は、少年じゃないかと考える。
なんせこの少年は、オレ達と話せる。
心を許した猫達が、彼に殺されても不思議ではない。
「 白猫の三郎さんに頼まれたんです。あなたに伝えて欲しいって 」と少年は言った。
「 何故、直接言いに来ない 」と黒猫は言った。
「 他の白猫達に見られたらまずいって。白猫と黒猫は仲が悪いんですか? 」
と少年は言った。
「 オマエ等、人間の方が仲は悪いじゃないか。オレ達は色の違いで殺し合いまでしない 」と黒猫は言った。
少年は、何度も転校を繰り返してきた。
違う街に移り友達ができる。
少年は、友達には見えないものが見れる。
聞こえない言葉が聞こえる。
ふと、それが友達に気づかれてしまう。
不気味がられ、やがて少年は1人ぼっちになる。
「 その力を恥じる事はない 」
と少年の父親は言う。
「 私たちは、そういう一族なの 」
と少年の母親は言う。
「 生きてる間には、伝えきれなかった言葉や想いを届ける事ができる 」
と少年の父親は言う。
だったら僕は、と少年は言う。
「 僕が生きている間に、伝えるね。2人も伝えてね 」
「 それが一番いいわね 」
と少年の母親は微笑む。