小説 あなたと夜と音楽と57
「 よく笑っていられるわね。あなたは死にかけたのよ 」と彼女は言った。
「 まぁ、こうして生きてるし、自分で選んできた事だしね 」と僕は言った。
僕が死んだら哀しんでくれる?と自信はないけど彼女に聞く。
彼女は空を見上げる。
何かを待ってるかの様だ。空からUFOが来て彼女をさらってしまうかも知れない。
そうなったら、流石に奪い返す事は無理かな、と僕は思った。そうね、と彼女は言った。
少しぐらいは、哀しむわ。
「 そんな事より、どうやって元の世界に戻るのかしら? 」と彼女は言った。
そうだった。戻る術を僕は知らなかった。
ここは何処なんだろう?
僕たちこそ、何処へ向かえばいいんだろう?僕たちは、手を繋いだまま立ち尽くしていた。