小説 あなたと夜と音楽と 55
「 僕はいつか彼女を失うと思います。でも、思い出す事が出来る。真実ばかりが人を幸せにするとは思わない。でも真実は失くした事を失くさない為にあると想う。失くさなければ、また戻ってこれる。引き返す事は、決して、カッコ悪いことじゃない 」と僕は言った。
「 私には、もう、何もできないんだよ 」と私は言った。
私は私自身で心を擦り減らしてきた。
今更、何をしても手遅れなんだ。
「 小説を書けばいいんじゃないんですか? 」と僕は言った。
「 書くべき事がない 」と私は言った。