小説 あなたと夜と音楽と 12
男は私の方を振り向く。
「 可笑しいな。何故、私はジャズミュージシャンばかりに出会うのだろう? 」とアンタは想うんだろう?
彼は笑いながら話す。
「 数日前にエレベーターで、ソニー・ロリンズにも会いました 」
と私は言う。
「 知ってるよ、それも。アンタの事なら何でも知ってる 」
「 ここの店はよく来るのかい? 」
「 そうですね、一週間に一回は来ます 」
彼は何時の間にか煙草を吸っている。灰皿は煙草の吸い殻で一杯になっている。どうしてマスターは注意しないのだろう。
「 奥さんと二人で来てただろう? 」と彼は言う。