小説 火星ラバー 3
僕は最終手段を出す事にした。
このままじゃ、本当に地球人になってしまう。
地球人になるのは、7000回生まれ変わってもごめんだ。
「 君は< 世界のはじっこ >がどんな場所か分かる? 」
「 何もない所かしら? 」
「 そうなんだ、そこには何もない。山も海も川もビルもない。風さえ吹かない 」
「 映画館は? 」
「 映画館もサーティワンのアイスクリームもない。生理用品もコンドームもない 」
「 ひどい場所ね 」
「 そうなんだ。生きていくのには、ひどい場所なんだ。でも隣には僕の大切な人がいて、そっと手を握っていてくれる。だからそんな場所にいても、悪くないって思えるんだ 」
「 その隣にいるのが私なのね? 」
「 そうだよ、君以外は考えられない 」
彼女は腕組みしながら、何度も頷いた。
「 分かったわ、あなたを許すわ 」
僕は最終手段で何とか乗り切り、無事に証言台から降りる言葉が出来た。
「 それで、どうやって火星人になれるのかしら? 」
「 ちょっと待ってよ、何で君が火星人になる必要があるんだろう? 」
「 だってあなたは、地球人になりたくないんでしょう? 」
「 うん、12000回生まれ変わっても、ごめんだよ 」
「 だったら私が、火星人になるわ 」
「 新しい洗濯機がいるよ。でも本当にいいの? 」
「 あなたと私が思ってる事が、完全に一緒じゃなくてもいいのよ。そんな考え方も悪くないかなって想える方が大事なの。愛するって、そう言う事でしょ? 」
そんな訳で、僕等はヤマダ電機で最新型の洗濯機を買い、その中に2人で入った。
脱水が終わり、乾いた後、彼女はピカピカの火星人になった。
似合うかしら?と始めは照れていた。
今、僕は4人の女と結婚して、24人の子供たちと暮らしている。