素敵な図書館

毎週土曜、夜11時に僕、佐藤が自作小説をアップしていくブログです。コーヒー、あるいはお酒を飲みながら訪問していただけたら嬉しいです

小説 火星ラバー 1

「 あなたに謝らないといけない事があるの 」

「 謝らなくていいよ、どうせ浮気でしょ? 」

僕は彼女の浮気グセには慣れていた。

イイ女には男が寄ってくるのだ。仕方ない。

「 その何倍もヒドイ事なの 」

と彼女は言った。

「 どんなことを聞いても怒らないよ 」

「 本当に? 」

「 僕の心はこの宇宙より広い 」

「 実は、洗濯機を壊してしまったの。」

「 冗談だろ‼ そんなのってないぜ‼ 」

僕は200年ぶりに怒った。

「 何よ、怒らないって言ったじゃない! 」

彼女はメソメソ泣き出した。

こう言うの卑怯だ。全く女っていう生き物は。

「 洗濯機がないと、火星に帰れないって事は知ってるよね? 」

「 知ってる 」

「 一週間に一度、火星に帰らないと僕は地球人になってしまう。それも言ったよね? 」

「 それも知ってる 」

彼女は泣き止まない。

何だか、僕の方が悪い事をしたみたいだ。

「 最近、確かに揺れも酷かったし、ヤマダ電機に修理に行こうと思ってたんだ。何とか間に合うよ 」

ヤマダ電機には行ったの。でも修理不可能だって 」

「 修理不可能?そんなに状態がヒドイの? 」

「 どんぐりが詰まって取れないのよ 」

と彼女泣きながら話す。

ちょっとまてよ、どんぐり?

「 私が手違いで入れてしまったの 」

「 洗濯機が壊れる程? 」

「 50個かな、いや、78個入れたかも 」

「 悪意があるね、それは 」

僕は怒り気味に話す。

「 あなたが、ハッキリさせないからよ! 」

彼女は、もう泣いてない。

「 何を? 」

「 私達の関係よ!火星の女とは、先月別れるって言ったじゃない! 」