小説 火星ラバー 1
「 あなたに謝らないといけない事があるの 」
「 謝らなくていいよ、どうせ浮気でしょ? 」
僕は彼女の浮気グセには慣れていた。
イイ女には男が寄ってくるのだ。仕方ない。
「 その何倍もヒドイ事なの 」
と彼女は言った。
「 どんなことを聞いても怒らないよ 」
「 本当に? 」
「 僕の心はこの宇宙より広い 」
「 実は、洗濯機を壊してしまったの。」
「 冗談だろ‼ そんなのってないぜ‼ 」
僕は200年ぶりに怒った。
「 何よ、怒らないって言ったじゃない! 」
彼女はメソメソ泣き出した。
こう言うの卑怯だ。全く女っていう生き物は。
「 洗濯機がないと、火星に帰れないって事は知ってるよね? 」
「 知ってる 」
「 一週間に一度、火星に帰らないと僕は地球人になってしまう。それも言ったよね? 」
「 それも知ってる 」
彼女は泣き止まない。
何だか、僕の方が悪い事をしたみたいだ。
「 最近、確かに揺れも酷かったし、ヤマダ電機に修理に行こうと思ってたんだ。何とか間に合うよ 」
「 ヤマダ電機には行ったの。でも修理不可能だって 」
「 修理不可能?そんなに状態がヒドイの? 」
「 どんぐりが詰まって取れないのよ 」
と彼女泣きながら話す。
ちょっとまてよ、どんぐり?
「 私が手違いで入れてしまったの 」
「 洗濯機が壊れる程? 」
「 50個かな、いや、78個入れたかも 」
「 悪意があるね、それは 」
僕は怒り気味に話す。
「 あなたが、ハッキリさせないからよ! 」
彼女は、もう泣いてない。
「 何を? 」
「 私達の関係よ!火星の女とは、先月別れるって言ったじゃない! 」