小説 夜のニワトリ 12
「 お嬢ちゃん、名前は? 」とシルクは言う。
「 言う必要はないわ 」と博士の娘は言う。
「 物語には名前が必要だ 」とシルクは言う。
やれやれ、僕の真似じゃないか。
「 名前が無ければ、お嬢ちゃんは大した役じゃないかも知れない 」
「 この光線銃で、この世から、おさらばかも知れない。それでも言わない? 」とシルクは言う。
ムムムムっと博士の娘は言う。
ムムムムムムムムっ。
「 私はフェミニンよ! 」と博士の娘は声高々に言う。
誰一人笑わなかった。
失敗したわ、博士の娘はモジモジしながら凹んでいる。
このままじゃ、目の前の光線銃野郎と同じだわ。
ダメよ、そんなの全然ダメよ。
「 フェ、フェ、フェミニンビューティーよ!私はフェミニンビューティーよ!! 」
やっぱり、誰も笑わなかった。
「 彼女は関係ない。撃つなら僕を撃てよ 」
本当は撃たれたくないけど、僕は言う。
シルクは腕組みしながら、考えてる。
どちらを先に撃つか考えているのだろうか?
「 ついてこい。面白いものを見せてやろう 」とシルクは言う。
螺旋階段が天国の階段の様だ。