小説 夜のニワトリ 4
僕は言葉が話せない。
二足歩行ではなくキャタピラ。
両手は上下しか動かせない。
身長は135㎝。
顔の表情だって、ワンパターン。
驚きも、笑いも、悲しみも表現できない。
おまけに、夜しか動けない。
2020年に存在するロボットとは、あまりにもかけ離れている。
「 これが博士の言う、今後、人間と共存していくモノなのね 」と博士の娘は言った。
「 モノじゃない、夜のニワトリばい 」と博士は怒り気味に答えだ。
但し、と博士は続ける。
「 共存していくかは、人間次第ばい。場合によっては、とてつもない脅威になるばい 」
「 脅威になるのに、何故造ったのよ! 」と今度は、博士の娘が怒り気味に言った。
博士は、一枚のコインをポケットから取り出す。
「 物事には、コインと一緒で表と裏があるばい 」と博士は言った。
コインを指で弾いて、手の平に隠す。
「 表を『 正義 』裏を『 悪 』あるいは表を『 光 』裏を『 闇 』と呼ぶばい。人によっては、その逆もありえるばい 」と博士は言った。
「 要するに、良い面も悪い面もある。人間の受け止め方次第って事ね 」と博士の娘は言った。