小説 素敵な図書館 1
ボクは図書館で働いている。
この図書館は、小さな小さな街にある。
電話帳にも、グーグルマップにも載っていない。
そんな図書館があるわけないじゃないか?
と、あなたは怒るかも知れない。
そんな事、言われても困る。
ボクは、確かにこの図書館で働いている。
ボクは週3日、13時から深夜の5時まで、本の貸し出しの受付をしている。
毎日、たくさんの人がこの図書館に訪れる。
ひどい時には、隣の街まで車の渋滞になる。
さっきも言った様に、電話帳にも、グーグルマップにも載っていなくてもだ。
この図書館は、本を貸し出しているだけではない。
例えば、珈琲の本のコーナー。
ここでは、本に載っている珈琲豆をその場で飲む事が出来る。
何人かのスタッフがいて、一杯一杯、丁寧にドリップをしてくれる。
勿論、スタッフは珈琲の事に詳しく、質問も対応できる。
気に入れば、その珈琲豆を購入出来る。
珈琲のカップも置いてある。
プレゼント用にもラッピングしてくれる。
配送の手続きだって出来る。
大抵の人は、珈琲の本を借り、スタッフとおしゃべりを楽しんで、珈琲豆と珈琲カップを自分用に、あるいはプレゼント用に買って行く。
ボクは音楽の本のコーナーが好きだ。
ジャズレーベル、ブルーノートの本の隣には、ブルーノートの最新作まで視聴、購入が出来る。
楽器まで置いてあり、自分で演奏が出来る。
気に入った者同士でセッションできる部屋もある。
アンプやスピーカー、楽器も購入出来る。
全ての本のコーナーが、実際に体験できる仕組みになっている。
だから、この図書館は、たくさんの人が働いている。
この小さな小さな街は、ここで働いている人達が造った街でもある。